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月村了衛「機能警察」

 

新年早々に読了したミステリーです。警視庁に「特捜部」という民間傭兵出身者などを集めた組織が設置され、近未来の二足歩行の戦闘装備である「龍機兵」を操り、敵と戦うというSF小説です。

 

110番通報を受けて警視庁はある建物に向かうが、そこで待ち受けていたのは、巨大な3体の機甲兵装だった。彼らは市民を巻き込みながら、地下鉄構内に立てこもり、警視庁の対テロ部隊SATをおびき寄せ、その殲滅を画策したのだった。

特捜部も龍機兵を出動させたが、間一髪のところで大きな被害は免れたものの、SATは甚大な被害を出す。

特捜部の部長は外務省出身の沖津。龍機兵を操縦するのは、元傭兵の姿、ロシア警察出身のユーリ、そして元テロリストの女性ライザだった。

敵の機甲兵装を操縦していたのは中国人の王富國と王富徳の兄弟だった。王富徳は現場で姿に殺害された。3人はかつて東チモールで傭兵として共に戦った仲で、姿は瀕死の王富徳を助けた恩があった。

生き残びた王富國はおそらく次の事件を計画しているものと予想され、特捜部はこれを阻止することに全力を挙げる。そして、特捜部は王富國らの潜伏先を突き止め、奇襲作戦を決行する。用意周到の作戦であったが、警察内の軋轢が作戦の足を引っ張ることに。。。

 

この作品のモチーフは、警察内部の縦割り構造です。法改正をして新たな組織が立ち上がり、龍機兵を操るために外部から多くの精鋭たちが集められたが、それが本流の警察官たちとそりが合わず、敵を利することになってしまいます。特捜部の面々は、雇われの身としてドライにミッションを追求するのですが、そんなメンタリティは同朋意識が強い警察官組織とは合わないわけです。そんな不和が作戦の遂行にも悪影響をもたらします。

 

それから、警察組織が民間出身者を雇わなければテロ組織と戦えないという設定が意味深です。特捜部に集められた面々も、海外で実戦を経験してきているという設定です。将来テロ組織の装備が高度化すれば、そういう時代が来るかもしれませんし、そうなれば、伝統的な警察組織との軋轢というのは現実味を帯びてくるかもしれません。

 

大変面白いSF小説でした。これからシリーズを読み進めていきたいと思います。