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濱嘉之「国境の銃弾」

 

濱嘉之氏の片野坂彰シリーズは最近はまっています。この作品は、片野坂シリーズの第一弾ですが、世界の政治情勢の独特な分析が登場人物の会話の随所に垣間見られ、とても刺激的なミステリー作品です。

 

片野坂は警察庁に入庁したキャリア官僚だが、公安の現場にはまり、警視庁の公安部長付というポストに就いているなど、異端のコースを歩んでいる。海外で公安を学ぶ際には傭兵として実戦に参加した経験も持つ。

 片野坂とチームを組むのが警視庁プロパーの香川だ。香川がかつて片野坂の指導を行うなど気心知れた仲で、片野坂も一目置いている公安のベテランだ。

もう一人は音大出身で数か国語を操る才女の白澤だ。ベルギーで得意の語学とサイバーテクを駆使して諜報活動を行っている。

事件はまず対馬で起こる。観光客にまぎれた3人組の男が一発の弾丸で狙撃されて死亡する。その頃、トランプ政権が金正恩の斬首作戦が話題にあがっており、対馬には各国の一流スパイが集結していた。さらに、東大キャンパスでは、半島とつながりのある政治家がやはり同じ銃弾で狙撃され死亡する。銃弾は特殊な加工がされたファインセラミックス製だった。その銃弾を頼りに追跡していくと、半島の宗教と米国の軍事会社とのつながりが見えてくる。。。

 

 このシリーズ作の魅力は、片野坂率いるチームのメンバーの魅力的なキャラクターでしょう。日本に諜報機関がないことを懸念する声が聞かれる中、こんな部隊が実在していたらなんて頼もしいだろうか、と思わせるような設定となっています。

 

そして、ベテラン香川の会話に溢れる豊富な国際情勢分析が、この小説の深みを醸成しています。この小説でも、話はイスラエルやベルギーなど、東アジアにとどまらない世界的な広がりを見せています。

 

この作品の続編である『動脈爆破』『紅旗の陰謀』もとても面白い作品です。

 

 

日本でもこういうミステリーがもっと出版されることを期待します。