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真山仁「ハゲタカ」

前から読みたいと思っていた作品ですが、やっと手にしました。

一言で言えば、素晴らしいとしか言いようがありません。その時代の肌感覚がよく描かれていますし、豊富な金融の知識が埋め込まれていますし、何と言っても、キャラクター設定が秀逸です。最後主人公の執念が明らかになるストーリー展開は、主人公のキャラクターの魅力を高めています。

主人公の鷲津政彦は、ニューヨークでジャズピアニストを目指していたところを、その商才を見込まれて投資ファンドの世界に引っ張られる。東京に戻ると、投資ファンドのホライズン・キャピタルを率いて、不良債権の処理を手掛けるようになる。

他方、銀行員だった芝野は、友人が経営していたスーパーマーケットに転職するが、その友人を切って、再生を図る。

松平貴子は、由緒あるホテルを経営する一族で、欧米のホテルに就職して頭角を現すが、実家のホテルの窮状を見て、実家のホテルを継ぐ決断をする。。。

 

この3人が、それぞれの立場で、バブル崩壊後の日本経済の中で行動する物語です。鷲津は、いかにも欧米的な手法で、企業再生に大ナタを振るい、ハゲタカ呼ばわりされますが、この作品では、「ハゲタカ=悪」という構図が必ずしも当たっていないことを読者は認識させられます。むしろ、鷲津のやり方こそ、日本経済の再生に寄与するものであることが描かれています。

 

鷲津、芝野、松平の3名が、うっすらと関わりを持ちながら物語が進んでいくスタイルが、何ともおしゃれでエレガントです。

そして、何と言っても、この作品の中では、ジャズ音楽が効果的に使われているのが素晴らしいところです。

 

この作品は、間違いなく、日本で最も素晴らしい金融ミステリー小説の一つです。