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「君たちはどう生きるか」★★★★☆

近年、これだけ賛否両論を巻き起こした作品はなかったかもしれません。

ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞を受賞したことが報道されましたが、ちょうどその日に鑑賞してきました。

戦争中、真人は母親を火事でなくす。その後、父親と共に田舎に引っ越すが、そこで父親が再婚したのは、真人の母親の妹の夏子だった。真人は新しい学校や生活に馴染めずにいる。真人らが住むことになった屋敷は、不思議な青鷺が現れる。そして、屋敷の端っこにある塔は秘密が隠されており、入ってはならないとされていた。

ある日、体調を崩した夏子が行方不明に。真人は夏子が森の中に入っていくのを見た。真人は、青鷺の導きも受けながら、夏子を助ける旅に出る。。。

 

この作品は、事前の宣伝を行わないことが大きく取り上げられました。結果的に多くの人々が鑑賞することにはなりましたが、賛否は大きく分かれるという、これまでのジブリ映画とは大きく異なる評価を得たわけです。

 

多くの方々がしっくりこなかったのは、おそらく荒唐無稽も思えるストーリー展開にあったのかもされません。つまり、何が言いたいのかがわからないという感想でしょう。それはそれでわかります。

しかし、この作品で宮崎監督らが何か明確なメッセージを伝えたかったというよりは、むしろ神話の世界観を描きたかったのではないかという気がします。そのベースにあるのは日本神話の天地創造のように思われます。ヒミは天照大神、青鷺は八咫烏をモチーフにしているように思います。ただ、実際に描かれているのは、和洋折衷ともいうべき不思議な世界です。

つまり、この作品では、宮崎監督らは壮大な神話を再構築して描いているという気がします。

そういうふうに見ると、この作品の意味を深く考えるのもあまり意味がないように思われ、描かれた世界観を純粋に楽しむというのが、この作品の見方なのではないかという気がしました。

この作品が海外で高い評価を受けているのも、強いメッセージがないが故に、いかなる宗教の人にとってもそれぞれの見方ができる点にあるからのような気がしました。