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月村了衛「土漠の花」

ソマリアに派遣された自衛隊を取り上げた作品です。

PKO活動で派遣されたにもかかわらず、現地の部族間闘争に巻き込まれてしまい、自衛隊史上初めて、武力行使による死者を出したという設定です。

ソマリアに派遣された自衛隊は、墜落したヘリの救出に当たっていた。そのとき、一人の現地の女性が助けを求めて駆け込んできた。その女性を追ってきたのは、石油利権を巡って対立する部族だった。女性をかくまっていた自衛隊の隊員が狙われ、次々と命を落としていく。

隊員たちは、この女性を見捨てるわけにはいかないが、この女性をかくまっていることで、部族間の戦闘に巻き込まれるという深刻なジレンマに陥る。また、隊員たちは、敵を殺害するにつれて、愛する子どもたちにどう説明すべきか悩みが深まっていく。

さらに、「土獏」という自然の脅威とも戦わなければならない。

隊員たちは、味方の救護が本当に来るのか不安を募らせながら、状況を打開するために必死に戦い続けた。。。

 

 

月村氏の他の作品(『機龍警察』など)とのあまりの違いに戸惑いもあることも事実ですが、ミステリーとは一線を画しながらも、とてもスリリングな描写で、自衛隊員たちの内面の葛藤を鮮やかに描き出している作品で、作者の素晴らしい文体によるところもあり、読み進めるたびにぐいぐいと引き込まれていきました。

 

とても読み応えのある作品でした。