かつて何度か観た映画でしたが、昨今のイスラエル・パレスチナ情勢を鑑み、再度大型スクリーンで鑑賞しましたが、今の中東の混迷の原因を端的な掴むのに最適な作品であることを改めて認識しました。
ロレンスはアラブ民族をトルコから解放するために奮闘するわけですが、結果的は英国はフランスと密約を結んで領土を分割してしまいます。この無責任なやり方が以後長く続く中東の混乱を引き起こす根本要因になっていることは言うまでもありません。
作品でも描かれているように、この地域には多くの民族が存在していました。そこにオスマン帝国という重石があって辛うじて秩序が保たれていたわけですが、英国はその重石を取っ払った上で、欧米列強の進出を認めてしまったわけです。
これはイラク戦争の際の米国の振る舞いと似ています。米国はフセインという重石を取り除いたことで地域に混乱を招いたわけです。こうした欧米列強の無責任な行為が歴史的に繰り返されてきた結果が今の中東情勢を招いていることは、もっと強調されてもよいと思います。
以前の記事にも書きましたが、この作品の見どころは、ロレンスがマッチの火をフーッと吹き消すと同時にパッと場面が夕焼けに染まる砂漠の映像に切り替わるところでしょう。<日常的>な都市の場面から一気に<非日常的>な砂漠へとスリップさせられるタイミングがいかにも見事です。
今こそ多くの若い世代にも見てもらいたい作品です。