映画、書評、ジャズなど

佐藤究「幽玄F」

著者の前作『テスカトリポカ』が素晴らしい作品だったので、この新作を手に取ってみました。

著者の謝辞によると、三島由紀夫の超音速戦闘機の搭乗体験記に強い影響を受けているようです。

主人公の透は戦闘機のパイロット。小さい頃から空に憧れ、パイロットを目指す。

やがて透は自衛隊に入り、F-35Aを操縦するようになり、並外れた飛行技術を発揮するようになる。

タイで多国間共同訓練が実施され、透は派遣される。やがて透は帰国するが、身体に異常をきたすようになり、パイロットを辞め、バンコクバングラデシュで転々と働くようになる。

透は、バングラデシュの奥地でUFOが降りてきて宇宙人を銃で撃ったという話を聞く。透はその場所に向かい、そこでF-35Bの機体を発見する。透はその奥地に滑走路を作り、機体を修繕して、超音速で飛行させた。。。

 

この作品では、仏教の影響が色濃く描かれています。主人公の祖父が真言宗の住職で、両親が離婚した後、主人公は祖父の家で生活することになります。作品中、仏教の描写が随所に登場します。その意味するところを理解するのは難しいですが、作品全体の空気を基底しています。

 

前作ほどの衝撃は感じませんでしたが、世界を舞台にした壮大な作品に仕上がっており、著者の筆力を感じた作品でした。