映画、書評、ジャズなど

小川哲「地図と拳」

少し前に読了した作品でしたが、余韻の深い読後感故に、なかなか書評が書けずにきてしまいました。

満州という広大な土地の一角の架空の都市を舞台に、様々な立場の人々が関わり合い、新しい都市を建設していき、それが失敗する過程を描いた作品です。

この作品では、架空の都市である「李家鎮」が舞台となっています。そこに、都市計画に携わる日本人やロシアの神父が関わってきます。

 

この作品のすごいところは、架空の都市という設定のSF小説であるにもかかわらず、立派な歴史小説にもなっているところです。こんな小説な生半可な知識では書けません。

著者の経歴を見ると、東大大学院の総合文化研究科博士課程に在籍されていたとのことで、幅広いバックボーンをお持ちなのだと思われます。

 

以前読んだ『嘘と正典』よりも読みやすい作品になっていたと思います。

いつかまた読み直してみたいと思える作品でした。