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月村了衛「欺す衆生」

機龍警察シリーズがとてもスリリングで面白かったので、著者の本作品を読んでみたのですが、これがまたとてもよくできていて大変面白く、あっという間に読み通してしまいました。

この作品は、かつて日本社会を騒然とさせた豊田商事の事件を下敷きにしたもので、本作品では横田商事として描かれています。

横田商事の会長の視察現場に居合わせてしまった主人公隠岐は、その後、足を洗って別の職業につくが、同じく元横田商事の因幡に誘われて、原野商法や海外ファンドに手を出し、再び詐欺の道に戻っていく。

2人の成功を見て、ヤクザが近寄ってくる。隠岐らもヤクザに頼るようになり、ヤクザから離れられなくなっていく。。。

 

一旦ヤクザの世界に頼ってしまったことで、そこから足を抜けなくなり、家族まで危険に晒すような事態を招いてしまう描写が、じわじわと読者の恐怖心を煽ります。詐欺の手口の描き方にも大変リアリティがあり、著者の筆致にどんどん引き込まれていきます。

 

機龍警察とは全くテイストの異なる作品ですが、月村了衛氏の新たな魅力を味わえる作品でした。