映画、書評、ジャズなど

2024-01-01から1年間の記事一覧

澁澤龍彦「高丘親王航海記」

高丘親王航海記 (文春文庫 し 21-7) 作者:澁澤 龍彥 文藝春秋 Amazon 著者の晩年に書かれた遺作です。享年は59歳です。 本書の内容は、主人公高丘親王が天竺を目指して旅に出る話です。高丘親王は、義母の薬子から幼少期に性の手ほどきを受け、そのことが…

「花様年華」★★★★

花様年華 (字幕版) トニー・レオン Amazon ウォン・カーウァイ監督の作品です。トニー・レオンとマギー・チャンの間で交わされる静かで優雅な恋がとても美しく描かれた作品です。 新聞記者のチャウと社長秘書のチャンは隣人同士。二人とも夫婦で暮らしている…

東野圭吾「祈りの幕が下りる時」

祈りの幕が下りる時 (講談社文庫 ひ 17-33) 作者:東野 圭吾 講談社 Amazon 巧妙なプロットが光る作品で、最後までぐいぐいと引き込まれます。 明治座の演出家を訪ねた幼馴染の女性が殺害される。殺害現場の近くの河川敷では、ホームレスが焼死する。この2つ…

奈良紀行

この夏、久しぶりに奈良を旅してきました。奈良を訪れるのは中学校の修学旅行以来です。奈良と橿原神宮に一泊ずつ泊まり、古都をぐるっと巡るプランです。 近鉄奈良駅に着いてまず驚いたのは、鹿の多さ!! 街中ギリギリまで鹿が我が物顔で闊歩している光景は…

「ボレロ 永遠の旋律」★★★★☆

世界中で多くのジャンルのミュージシャンたちに愛され演奏されてきた♪ボレロ。ラベルの代表曲であるこの曲が、実はラベルを悩ませ続けてきたという話です。 スランプに陥っていたラベルは、バレエダンサーのイダから曲を依頼されて、♪ボレロを作ります。公演…

楊双子「台湾漫遊鉄道のふたり」

台湾漫遊鉄道のふたり 作者:楊双子 中央公論新社 Amazon 戦前の日本統治下における台湾で、日本人の女性作家千鶴子が台湾に滞在中、二十歳の通訳の千鶴との淡い交流を描いた作品です。 台湾の食がテーマになっており、とにかく作品中に台湾の食べ物がふんだ…

劉慈欣「三体」

三体 (ハヤカワ文庫SF) 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon 最近文庫化やドラマ化で話題の中国の作家による長編SFです。古典力学における三体問題をモチーフにした作品です。 物語は中国の文化大革命に始まります。父親が紅衛兵に殺害された葉文潔は山奥の基地で…

馳星周「少年と犬」

少年と犬 (文春文庫) 作者:馳 星周 文藝春秋 Amazon 震災で飼い主を亡くした犬が、日本全国を旅しながら、様々な人間と出会い、触れ合うという話です。犬が喋るシーンはないものの、犬の気持ちが手に取るように伝わり、著者の圧倒的な筆力を感じさせてくれま…

安野貴博「サーキット・スイッチャー」

サーキット・スイッチャー (ハヤカワ文庫JA) 作者:安野 貴博 早川書房 Amazon 解説者が、日本のエンターテイメント小説界における「令和のデビュー作五傑」に入ることは間違いないと断言されていますが、とてもスリリングでよく練られた作品です。 自動運転…

諏訪紀行

長年行きたかった諏訪大社巡りをしてきました。諏訪大社は上社の前宮と本宮、下社の春宮と秋宮の4つの神社から構成されます。いずれの神社にも御柱が天に向けて建てられています。 まずは、下諏訪駅で下車し、そこから十五分ほど歩いて下社の秋宮に向かいま…

道尾秀介「カエルの親指」

「カラスの親指」シリーズ 合本版 (講談社文庫) 作者:道尾秀介 講談社 Amazon ヒューマンタッチのミステリー作品です。 詐欺に巻き込まれて、詐欺師たちに追われる身となった武沢と、テツという二人の中年男性がタッグを組むことになる。その生活にマヒロが…

エドワード・アンダースン「夜の人々」

夜の人々 (新潮文庫 ア 28-1) 作者:エドワード・アンダースン 新潮社 Amazon かつてレイモンド・チャンドラーが、いままでに書かれた最高な犯罪小説の一つと称賛したとされる作品、と言われれば、手に取らざるを得ません。その前振りに違わず、深い余韻を残…

三島紀行

静岡県の三島を中心に旅をしてきました。東京から程近く、最近ではスカイウォークがインバウンド客に人気となっていますが、案外知られていない魅力がある地域です。 まずは三島大社にお参りです。 三島といえば、富士山からの湧水が有名です。街のあちこち…

松浦寿輝「名誉と恍惚」

名誉と恍惚(上) (岩波現代文庫 文芸357) 作者:松浦 寿輝 岩波書店 Amazon 名誉と恍惚(下) (岩波現代文庫 文芸358) 作者:松浦 寿輝 岩波書店 Amazon 以前読んだ『香港陥落』につながる大作です。 舞台は戦前の上海。日本人の警察官芹沢が、陸軍将校の嘉山…

加藤シゲアキ「なれのはて」

なれのはて 作者:加藤シゲアキ 講談社 Amazon 直木賞候補になった作品です。惜しくも受賞は逃してしまいましたが、巧みなプロット、繊細な表現で読者を虜にさせる著者の筆力に圧倒されます。 話はテレビ局のイベント企画部門の女性職員が持っていた一枚の絵…

「君たちはどう生きるか」★★★★☆

近年、これだけ賛否両論を巻き起こした作品はなかったかもしれません。 ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞を受賞したことが報道されましたが、ちょうどその日に鑑賞してきました。 戦争中、真人は母親を火事でなくす。その後、父親と共に田舎に引っ越すが…

レイモンド・チャンドラー「ロング・グッバイ」

ロング・グッドバイ フィリップ・マーロウ〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:レイモンド チャンドラー 早川書房 Amazon 久々に読み直してみましたが、さすがによく練れているミステリーです。そして、何と言っても村上春樹氏の翻訳が読みやすく、グ…

「PFRFECT DAYS」★★★★★

ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役にして製作した作品で、役所広司はカンヌで男優賞を受賞した作品です。 ユニクロの柳井社長の息子さんでもある柳井康治氏が渋谷のトイレを刷新するプロジェクトをPRする目的で計画したものです。 役所広司演じる中…

佐藤究「幽玄F」

幽玄F 作者:佐藤究 河出書房新社 Amazon 著者の前作『テスカトリポカ』が素晴らしい作品だったので、この新作を手に取ってみました。 著者の謝辞によると、三島由紀夫の超音速戦闘機の搭乗体験記に強い影響を受けているようです。 主人公の透は戦闘機のパイ…

「アラビアのロレンス」★★★★★

アラビアのロレンス (字幕版) ピーター・オトゥール Amazon かつて何度か観た映画でしたが、昨今のイスラエル・パレスチナ情勢を鑑み、再度大型スクリーンで鑑賞しましたが、今の中東の混迷の原因を端的な掴むのに最適な作品であることを改めて認識しました…

小川哲「地図と拳」

地図と拳 (集英社文芸単行本) 作者:小川哲 集英社 Amazon 少し前に読了した作品でしたが、余韻の深い読後感故に、なかなか書評が書けずにきてしまいました。 満州という広大な土地の一角の架空の都市を舞台に、様々な立場の人々が関わり合い、新しい都市を建…

和歌山紀行

この年末は、東京の喧騒から逃れようと、和歌山県を旅してきました。南紀の方は鉄道で行くと思ったよりもかなりの時間がかかり、これまでなかなか行く機会がありませんでしたが、今回初めて勝浦や白浜に足を伸ばしてみました。 1. 紀伊勝浦探訪 名古屋で新幹…