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荒木あかね「此の世の果ての殺人」

今年の江戸川乱歩賞に審査員全員一致で選ばれたミステリー作品です。

著者は23歳での受賞ということで、本作品がデビュー作です。

小惑星熊本県に間もなく衝突して地球が滅亡することが明らかな世の中を描いた作品です。主人公は、教習所に通う女性。教習所の教官と共に行動し、トランクの中から発見された死体を巡る謎を解明していきます。

間もなく地球が滅びる世界の描き方が、とてもユニークです。絶望にかられた人々は、次々と自ら命を絶っていき、わずかに残った人々が、閑散とした街の中で、細々と生きているような世界観です。その描き方がある意味クールで、冷めた目線であるところが新鮮です。

この作品が評価された点は、おそらくこの意外性だったのではないかと推測しますし、その斬新さには脱帽します。この世界観を設定できた時点で、この小説はある意味で勝ちが決まったと言えるかもしれません。

 

そのうえで、この世界観にどれだけ共感できるかによって、この作品の受け止め方が分かれるところのように思います。

 

いずれにしても、この若さでこれだけの作品を世に出せる才能はすごいことです。