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バリー・ランセット「トーキョー・キル」

私立探偵ジム・ブローディを主人公とするシリーズの2作目です。

東京を中心に横浜中華街、フロリダ、さらにはバルバドスへと舞台が展開していく壮大なミステリー小説です。

ブローディは、三浦という96歳の老人から警護の依頼を受ける。かつて従軍時代の中国での蛮行の恨みから、中国人に命を狙われているという。その直後、三浦の息子が無惨な形で殺害された。ブローディも命を狙われ、事務所の社員も殺害されて首が送り付けられる。ブローディはその仇をとるために、事件の解明にのめり込んでいく。

殺害の手口は中国尾犯罪組織三合会によるものと思われた。ブローディは三浦の息子の剣道道場に踏み込み、中華街の長老を訪ね、次第に真相に迫っていく。そして、三浦の戦友の猪木を追って、フロリダ、さらにはバルバドスまで行き着く。そこで、ブローディは驚くべき真実を知る。。。

 

ブローディが美術商として禅僧の仙厓の絵を追っていることと、殺人事件が交錯するところがこの作品の最大の魅力の一つかもしれません。加えて、小説に登場する様々な東京という都市の描写や、剣道を始めとする日本文化についての鋭い描写、横浜中華街の闇の描き方は秀逸です。

 

一つ一つの登場人物の魅力がもっと伝わってくると、より楽しめたかなという気もしましたが、外国人の目線でこれだけ日本のことをしっかりと描写できる観察力と筆力は大したものだと思いました。