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手嶋龍一「武漢コンフィデンシャル」

元NHKの著者による作品です。

 

武漢と香港を結び付ける女性実業家、オックスフォード卒業生のインテリジェンス・ネットワークを効果的に物語に生かしつつ、コロナの発生源の謎が解明されていく作品となっています。

米国によるイラク攻撃についても、虚偽の情報に基づくものであった点が鋭く批判されています。

中でも感心させられるのが、武漢で生まれ香港に渡った神秘的な女性実業家マダム・クレアに関する描写です。中国史における武漢の役割とコロナ発生源としての武漢とがうまく結びつけられています。武漢は国民党政権の暫定首都とされた地です。その埠頭でのし上がった李志傑と劉少奇の出会い、文化大革命の中の香港への脱出など、中国の歴史と今回のコロナ禍をうまく結びつけています。

 

世界を股にかけた壮大なミステリー作品でした。