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「ベルイマン島にて」★★★★

 

イングマール・ ベルイマン監督が暮らしたスウェーデンフォーレ島を舞台にした作品です。北欧の荒涼とした美しい光景がとても印象的です。

トニーとそのパートナーのクリスはいずれも映画監督で、夏のひと時の滞在地として、ベルイマン監督が愛したフォーレ島を訪れる。2人はベルイマン監督ゆかりの地を巡りながら、脚本の執筆を進める。

クリスはトニーに自分の脚本の構想を話す。それは、“1度目の出会いは早すぎて2度目は遅すぎた”ために実らなかった初恋の話だった。かつてのカップルがフォーレ島の知人の結婚式で再会するのだが、男性は既に結婚していた。2人は再び恋に落ちるのだが、それも長く続かず、男性はだまって島を離れてしまう。残された女性のその後をどう描くか?トニーは迷い、クリスに相談したのだが、クリスの反応はつれなかった。

やがて、クリスはその脚本に基づきフォーレ島で撮影を行う。そこに娘も合流する。。。

 

 

現実世界と空想世界を行き来しながら(いずれもフォーレ島が舞台)話が進んでいくのがとても心地よい作品です。クリスの脚本の内容は、どことなく自分の現実の体験と重なっているようにも思えます。そして、その背後には、この作品の監督であるミア・ハンセン=ラブの実体験が透けて見えてきます。

 

それにしても、北欧の情景はとても奥深いものがあります。明るさの裏にとてつもなく寒々とした影も感じられます。この両面が共存しているところにこそ、北欧の魅力があるのかもしれません。

 

ベルイマン監督の映画の場面が所々に出てくるのも、映画ファンにはたまらない魅力です。

 

観る側を飽きさせない巧妙な構成の作品で、あっという間に時間が過ぎていきました。