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レイモンド・チャンドラー「リトル・シスター」

 

リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)

リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

レイモンド・チャンドラーによる1949年の作品です。村上春樹氏の翻訳だけあって、すらすら安心して読めます。

 

私立探偵のフィリップ・マーロウの下へ、オーファメイという若い女性が依頼人として訪ねてくる。兄のオリンを探してほしいという依頼だ。

マーロウは、オリンの所在を追っていくうちに、オリンがギャング絡みのトラブルに巻き込まれていることに気付いていく。ホテルに行くとそこには簡易アパートに住む男の遺体があった。そして若い女性が逃げいていく。男の遺体のかつらの裏地から出てきたのは1枚の写真の受取証だった。その写真に写っていたのは、ハリウッド女優のメイヴィス・ウェルドと一人の男。

写真に写っている男は、殺し屋のギャングだった。写真に写っているときは、ちょうどギャングのボスが殺害されたときだったのだが、その殺し屋は刑務所の中にいたはずであった。その写真は、殺し屋が刑務所の中ではなくシャバにいたという証拠だったのだ。そして、その写真を撮った人物こそ、オリンだった。

オーファメイは、オリンからの連絡が途絶え、オリンがギャングから揺すろうとしたお金を独り占めしたのではないかと疑い、マーロウの下へやってきたのだった。そして、メイヴィスはオーファメイの姉であった。オリンはメイヴィスを使ってお金をせしめようとして、ギャングに殺された。そして、オーファメイはギャングからせしめたお金を持って、戻っていった。。。

 

ハリウッドも巻き込みながら展開していくストーリー展開は大変スリリングなのですが、最後、一体誰が誰を殺したのかがいまいちよく分からなくなってしまい、困惑していたところ、村上春樹氏の解説にも同じような指摘がありました。村上氏も、この小説を何度も読み返しているものの、結局誰が誰を殺したのかと訊かれると急には答えられないと述べており、それだけ、プロットにやや無理があるというのがどうやら衆目の一致するところと言ってもよさそうです。この作品を執筆していた頃、チャンドラーはちょうどハリウッドの仕事に忙殺されており、この作品の執筆に集中できなかったようです。

 

さはさりながら、この小説の雰囲気というか空気感という面で見れば、チャンドラーらしさにあふれていますので、読み終えた後はそれなりの充実感を味わえることは間違いありません。