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「鳥獣戯画がやってきた!」を見てきました



 六本木のミッドタウンにあるサントリー美術館で現在開催されている「鳥獣戯画がやってきた!」を見てきました。目当ては何と言っても、京都の高山寺というところに所蔵されている国宝「鳥獣人物戯画絵巻」甲巻から丁巻までです。ただ、展示が前期と後期に分かれており、甲巻から丁巻までのいずれについても、前期はその前半部分だけしか展示されておらず、全部見ることはできませんでした。中でも、兎が寝転がり蛙が楽しそうに両手を挙げて踊っている有名な箇所は、甲巻の後半部分なので、前期の展示では見られなかったのが少し残念です。

 この「鳥獣人物戯画絵巻」というのは、多くの模本があるようで、今回それも併せて展示されており、狩野探幽が書いた縮図もありました。また、この絵巻をモチーフにした様々な絵も展示されていました。こうした事実は、だいぶ昔からこの「鳥獣人物戯画絵巻」というのは「教養」として捉えられてきたということの現れと言えるわけです。

 この絵巻が後世のアニメに与えた影響は相当なものであるように思います。明らかに、現代の日本のアニメにつながるようなキャラクターの描き方が感じられます。

 そして、何と言っても、動物を人物のように捉えて描くというやり方の斬新さを挙げるべきでしょう。こうした動物に対する温かい眼差しにこそ、日本人の底流を流れる思想が反映されているように思います。西欧的な「人間vs動物」という考え方に基づき、動物などの自然は征服すべき対象として捉えるのではなく、動物の世界にも人間社会と同様な社会や掟が存在するかのような想像をする力が日本人にはあるわけで、この絵巻を見ても、動物に対する軽蔑の眼差しは感じられず、むしろ、動物たちに敬意を示しているかのようにも感じられます。

 ちなみに、この展示会では、陽物くらべの絵(男の一物を比べあっている絵)や放屁合戦の絵なんかもあり、そのリアルさに少々ひいてしまいますが、昔の人のユーモアセンスが感じられて面白いです。

 それから、子供を亡くした雀のところに鳥たちが弔問に訪れ、その後雀が出家するという話を描いた「雀の小藤太絵巻」というのもあったり、人間の娘と結婚したいと思っていた鼠がその願望を果たして結婚するものの、鼠の家に嫁いだことがばれてしまって娘が出て行ってしまい、失意の鼠が出家するという話を描いた「鼠草子絵巻」というのもあったりして、楽しめます。