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ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」

 

グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)

グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)

 

ミステリーの巨匠ヴァン・ダインによる古典的作品です。謎に包まれたグリーン家の屋敷を舞台に次々と人が殺されていくスリリングな作品で、探偵のヴァンスが鋭い推理を働かせながら事件を解明していくのを、作者であるヴァン・ダインが傍らで見守りつつ語る形態で物語は進んでいきます。

 

探偵のヴァンスの下を、地方検事のマーカムが訪れる。グリーン家で起こった殺人事件について相談するためだった。グリーン家の屋敷で長女のジュリアと末娘のアダが撃たれ、アダは一命をとりとめたものの、ジュリアが死んだのだ。グリーン家の長男のチェスターはマーカムとヴァンスの下に相談に訪れる。

グリーン家の亡くなった主は、家族は屋敷に住み続けないと相続権を失うという奇妙な遺言状を残していた。唯一の例外が末娘のアダで、彼女は養女だった。主の妻である夫人は足が不自由で、寝たきりの生活を送っていた。そして、邸宅には執事、料理女、女中が何人か住み込んでいた。

その後、グリーン家の家族は次々に殺されていく。相談に訪れたチェスター、その弟のレックスが殺され、主の妻も毒殺され、残されたのは、娘のシベラと末娘のアダだけになった。

殺害を実行しているのは、屋敷の中に出入りする人物だと思われた。邸宅にはしばしばかかりつけの医師フォン・ブロンも出入りしており、娘のシベラと親密そうなそぶりを見せていた。

事件が複雑化する中、ヴァンスはなかなか犯人の特定に至らない。ヴァンスは絵画と写真の違いを例に挙げながら、この事件の解決には、絵画を見るときに必要な構成的意図を見出す必要があると指摘する。そして、事件のディテールを分析しながら、犯人を特定していくのだった。

ヴァンスは、シベラと医師フォン・ブロンが既に婚姻関係にあることを突き止める。そして、アダが屋敷の料理女の実の娘であること、そして、アダも医師フォン・ブロンに思いを寄せていたと推理する。

一連の殺人は、アダによるものだったのだ。アダは、屋敷の元の主の部屋にある犯罪関係の書物から、数々の犯行の手口を研究しつくして、入念な準備の上で殺害を実行していたのだった。。。

 

ヴァン・ダインの作品は今回初めて手にしましたが、緻密なファクトの積み上げの中からヴァンスによる推理が導かれるプロセスは見事で、最初から最後まで読者を惹きつけます。

 

正に正統派のミステリーといった感じの読み応えある作品でした。