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「時をかける少女」★★★☆

時をかける少女 通常版 [DVD]

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 先日地上波で放送されていたのを録画して見てみました。
 ひょんなことから“タイムリープ”という時間を跳躍する能力を持ってしまう主人公の女子高生紺野真琴が、その能力を使って人生の些細なやり直しを繰り返す。そして、真琴はクラスメートの間宮千昭と津田功介と3人で平凡に野球を楽しむ日々を望んでいたが、ある日千昭から告白されたことに動揺して、結局、告白されない道を選択してしまう。そんな“タイムリープ”をむやみに繰り返す真琴には、様々な困難が覆いかぶさっていく・・・。

 過去の些細な行為な行為について「やっぱりああしておけばよかった・・・」と思うことは誰しもあるでしょうし、「もう1回あの時点に戻ることができれば、違うふるまいをするのに・・・」と考えたくなることがあると思います。特に、高校生の頃のような青春時代の行動を今振り返ってみると、何と未熟だったのかと自己嫌悪に陥ってしまうことが往々にしてあるのではないでしょうか。この映画の主人公は現にそういうことができる能力を手に入れ、過去のある時点に跳躍して人生をやり直すわけですが、真琴は決してそれによってより幸せになったというわけではありません。

 結局、人生過ぎてしまったことをあれこれ考えても仕方がない面があって、その時々の一瞬の経験を大事にし、そしてその延長線上に前向きに物事を考えて解決していくべきなのだ、というメッセージを私はこの映画から感じました。

 評論家の東浩紀氏が次のようにコメントしているのは、大変共感します。

「・・・この作品が感動的なのは、「人生はリセットできない」でも「人生はいくらでもリセットできる」でもなく、「人生はいくらでもリセットできるが、ひとつの場面はやはりいちどしか経験できない、したがって成長は無意味ではない」という、とても肯定的な、しかも力強いメッセージを伝えてくれるからです。」

hirokiazuma.com

 東氏がこの映画から受け取られた「成長は無意味ではない」という示唆は、なかなか意味深な面白い表現です。この意味を私なりにもう少しかみ砕いてみれば、自分の過去の行動というのは、人生の中での一度きりの無二の経験なのであって、そうした無二の経験の積み重ねの延長線上に今日の自分というものが形成されているのだ、それが成長というものであり、だから成長には意味がある、といった感じなのではないかと思います。

 細部を考えすぎると多少混乱するような設定もないわけではないのですが、大筋面白い映画であり、楽しむことができました。