「エルミタージュ幻想」★★★★

　ロシアのサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館を舞台に撮影された作品です。監督は昭和天皇を描いて話題となった『太陽』を撮ったソクーロフ監督です。
　周囲から姿の見えないソクーロフ自身がフランスの外交官キュスティーヌと共にエルミタージュ美術館を徘徊するという内容で、荘厳な美術館の内部に、ロシア貴族たちの華やかな生活が垣間見れられます。

　この映画の最大の特徴は、９０分をワンカットで撮影されていることです。これだけの長時間・長距離を手ぶれなく撮影するためには、カメラマンは相当な重労働を強いられたに違いありません。

　ワンカットのために大勢のエキストラを含む俳優たちが出演している光景も圧巻です。特に、ラストのオーケストラをバックに貴族たちが楽しげに踊るシーンは、ロシアのハイカルチャーの荘厳さやスケールの大きさをまざまざと見せつけられます。

　こういう絵は映画だからこそ撮れるわけで、映画でしか体感することができないものです。これを撮ったソクーロフ監督は、映画の持つメリットを知り尽くした上で撮影している感じがします。

　夢の中をさまようような心地よさを体感できる作品です。

P.S.本作品の成立秘話については、以下のページに詳しいです。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3296