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「グッド・ウィル・ハンティング」★★★★

グッド・ウィル・ハンティング~旅立ち~ [DVD]

グッド・ウィル・ハンティング~旅立ち~ [DVD]

 サウス・ボストン出身の超天才の若者ウィル(マット・デイモン)が、ある心理学者のセラピーを受けながら、心を開いていく過程を描いた映画です。登場人物それぞれの心の触れ合いがうまく描かれています

 恵まれない家庭環境で育ったウィルは、MITで清掃員のバイトをしながら、悪友達とつるむ生活を送っていたが、数学の才能は超天才で、MITの授業で出された超難題の宿題を密かに解いて掲示板に書いていた。そんな彼の類い希な才能を知ったMITのランボー教授(ステラン・スカルゲールド)は、傷害事件を起こして拘留されていたウィルの身柄を預かることになる。フィールズ賞を受賞しているランボー教授も、密かにウィルの才能に嫉妬していた。ウィルはセラピストたちになかなか心を開かないが、そんな中、ランボー教授の級友であるショーン・マクガイアだけは、不遜な態度をとり続けるウィルに対して辛抱強くセラピーを続ける。

「It's not your fault.」(君のせいじゃない)

とショーンは繰り返しウィルに語りかけ、ウィルはようやく心を開いてショーンに抱きつき号泣するシーンは、緊迫感と感動溢れるシーンです。

 ウィルは、ランボー教授の薦めでいくつかの企業の面接を受けたが、結局、カリフォルニアへ旅立っていった彼女の後を追う道を選択することになります。

 この映画の見所は、ウィルとショーンの間で徐々に信頼関係が醸成されていく過程にあることはもちろんなのですが、もう1つ注目すべき点は、この映画の舞台であるボストンにおける白人社会の格差を描いている点です。アイリッシュ系の白人から成るサウス・ボストンは、ハーバードやマサチューセッツに通う人々とは一線を画した社会を形成しています。『ディパーテッド』★★★や『ミスティック・リバー』★★★★といったボストンを舞台とする映画においても、こうしたボストンの二面性が描かれていますが、この映画でもこうした社会背景が1つのポイントとなっているように思います。

 いくらアメリカが平等な社会を標榜しようとも、その育った環境を全く無視できるという社会ではないことが、この映画の中で暗に示されているのではないかという気がしました。