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「セックスと嘘とビデオテープ」★★★★

 スティーヴン・ソダーバーグ監督による1989年の作品です。アメリカの中間層のカップルの日常生活に沸き起こる不思議な体験といった感じの映画です。

 弁護士のジョンには妻のアンと結婚していたが、ジョンはアンの妹のシンシアと不倫関係にあった。そんなとき、ジョンの旧友のグレアムが町に戻ってきた。アンはグレアムの不思議な魅力に惹かれ、グレアムの住居探しの世話をする。アンはグレアムの家を訪ねた際、グレアムの奇妙な趣味を知る。それは、女性に性的な話についてインタビューし、それをビデオに撮って個人的に鑑賞するという趣味だった。
 アンがシンシアにグレアムの趣味について話をすると、それに興味を抱いたシンシアはグレアムの家を訪ねる。シンシアはグレアムにインタビューを撮らせてしまうことになる。しかも、カメラの前で裸になって自慰行為を行ってしまったのだった。
 シンシアからその話を聴いたアンはシンシアを叱りつける。しかし、アンはジョンの不倫を知ると、自らグレアムのところに再度赴き、カメラの前で自らの性的な体験を赤裸々に話をすることになる。
 アンはグレアムのところを訪れビデオを撮らせたことをジョンに告げ、ジョンに離婚を通告する。ジョンは怒りの中グレアムの家に行き、グレアムを外に放り出すと、アンが撮らせたビデオを一人で鑑賞する。ビデオには性的な話をするアンの姿が映っていた。ビデオの中でグレラムの質問に答えていたアンは、やがてグレアムに質問する立場になり、グレアムの昔の恋人の話を聞き出す。2人はやがて良い雰囲気になっていき、ソファで絡み合い始めたところで、カメラは止められていた。グレアムの昔の恋人をジョンは寝取っていたことをグレアムに告白する。グレアムは収集したインタビューのビデオを全て廃棄する。
 不倫に溺れたジョンは結局大事な顧客を失い、対照的にアンはグレアムと幸せな生活を歩み始めたのだった。。。

 一見平凡で幸せそうな外見のアメリカの中間層夫婦の間に潜む出来事を通して、先進国社会の病理的な状況を表現している作品といえます。物や金の面では何一つ不自由のない生活ですが、どこか退屈さが蔓延しており、人びとは平凡な日常をぶち壊すという破滅的な方向に動いてしまうというのが、豊かな社会の行き着くところなのかもしれません。

 最後、アンとグレアムは新たな生活をスタートさせるところにまだ救いがありますが、それも一時的な退屈しのぎに過ぎず、そんな2人の幸せも長くは続かないかもしれないと思えてしまうのは私だけでしょうか。