今年も金沢ジャズストリートを見に金沢へ。
台風の影響で初日は天候に恵まれなかったのが残念でした。
鈴木央紹・原大力カルテット
鈴木央紹(ts)と若井優也(pf)の組み合わせは何度もライブを聴いたことがありますが、2人ともとてもセンスが良く、いつも満足する演奏を披露してくれます。今後の日本のジャズを引っ張っていくべき若手ミュージシャンです。
特に若井優也は天才的なセンスを持ち合わせたピアニストで、見るたびに成長している感じがします。
今回初めてホールでの演奏を見たのですが、ライブハウスでの演奏とホールでの演奏は、少し勝手が違うのかなぁ、という印象も受けました。ホールでの演奏は曲目のチョイスや全体のステージのコンセプトに関して、より綿密さが求められます。この辺が慣れてくると、もう少し違った印象になるような気がします。
Thomas Encho Trio(トーマス・エンコ)
フランスの天才的な若手ピアニストです。ヴァイオリンもやっていたようで、ステージで1回くらいはヴァイオリンを演奏します。
トーマス・エンコのステージは“リリカル”という表現がピッタリです。アメリカのモダンジャズの系統とは全く異なるいかにもヨーロピアンなステージです。弦を叩く指使い一つ一つにも繊細さが感じられます。また、ステージ全体を通して、一つのトーマス・エンコ・ワールドを作りあげている感じを受けました。
♪Softly as in the morning sunriseの演奏はいかにも彼らしいアレンジでしたし、ヴァイオリンを手にしての♪Beautiful Loveもスローテンポでユニークな演奏でした。ヨルダンの砂漠のテントの中で浮かんだという曲♪Dessertは、いかにも砂漠の殺伐とした感じが現れています。
トーマス・エンコには作曲のセンスがあるように感じられます。フランスにはミッシェル・ルグランという大作曲家がいますが、トーマス・エンコもその方面での今後の活躍が期待されます。
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Eric Alexander Quartet
金沢ジャズストリートの第1回に参加して、聴衆から大喝采を受けたカルテットです。前回と同じメンバーでも参加です。今回もホールは満員の観客で埋まっていました。
バラードの♪Nearness of Youの演奏がとても素晴らしく、印象的でした。また、エリックが抜けての♪You don't know what love is?も素晴らしい演奏でした。そして、アンコールは♪Brazilでしめ。メンバーが一人一人抜けていく演出も彼らならではのコミカルなパフォーマンスです。
モダン・ジャズの正統な継承者とも言うべきエリック・アレキサンダーですが、やはり、ジャズ・フェスではこういう存在は欠かせません。アメリカにおいてジャズが廃れているとはいうものの、やはり本場のミュージシャンの演奏には日本人にはない感性が備わっています。特にピアノは大御所のハロルド・メイバーンです。メイバーンはエリックの師匠であり、このバンドではリーダーのエリックに気兼ねすることなく、自由奔放かつ大胆に迫力ある力強いピアノを叩きます。さすが、マイルス・デイヴィスなど伝説的なジャズ・ミュージシャンたちとプレイしてきただけあります。
1日目総括
例年、このジャズストリートは天候に恵まれてきたのですが、今年は雨にたたられました。1番残念だったのは、尾山神社の屋外ステージでの演奏が途中で中止になったことです。この日は国立音楽大学ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラの演奏が見られなかったことです。昨年は、尾山神社でのこのバンドの演奏を見たのですが、プロ級のエンターテイメントで、多くの観客が興奮していたのを覚えています。
国立音楽大学は今年の4月からジャズ専修が新設されるなど、ジャズに力を入れ始めています。そして、あの小曽根真さんが教授を務めており、さすがにその実力はハイレベルです。
明日以降のステージに期待です。
1日目で印象的だったのは、やはりトーマス・エンコです。こういう雰囲気はヨーロッパのミュージシャンにしか出せないものでしょう。
MCでは砂漠で浮かんだ曲の話をされていましたが、ヨルダンに演奏に行くなど、いろいろな人生経験を踏んでいます。こういう経験がミュージシャンにとっての奥深さや視野の広さにつながっているのでしょう。この辺は日本のミュージシャンも見習うべき点かもしれません。
エリック・アレキサンダーは何となく金沢ジャズストリートの顔として定着しつつある観を受けます。金沢の耳の肥えた聴衆から圧倒的な支持を受けています。