私の大好きなウディ・アレン監督の最新作です。溢れんばかりのジャズをバックに、ウディ・アレン監督らしいセンス溢れるラブ・コメディが展開され、夢見心地で楽しめる作品です。
ニューヨーク育ちの青年ボビーは、ハリウッドに漠然とした憧れを抱き、映画界を取り仕切る叔父のフィルを頼って、単身ハリウッドへ移り、フィルの会社を手伝うことに。
右も左もわからないボビーのために、フィルは秘書のヴォニーをあてがう。ボビーはヴォニーと時間を共にするうちに、ヴォニーに惚れてしまうのだが、ヴォニー曰く、ヴォニーにはジャーナリストの恋人がいるとのことだった。
しかし、ヴォニーの恋人は妻帯者であり、離婚の決断ができなかったことから、別れを告げられる。ボビーは傷心のヴォニーを献身的に慰め、やがて二人は恋人関係になる。
二人は結婚してニューヨークに一緒に渡るという話になっていたが、ボビーは叔父のフィルから、自分は恋人と結婚するために妻と別れる決断をしたと告げられる。つまり、ヴォニーの恋人とはフィルだったのだ。
ヴォニーは迷った挙句、フィルと結婚することを決める。ボビーは再びニューヨークに戻り、ギャングと繋がりのある兄のクラブで働くことに。セレブが集まるその店で、ボビーは多くのセレブと知り合いになり、次第に力をつけていく。そして、知人の紹介によりお店で知り合ったもう一人のヴォニーと結婚して子供を設ける。
兄が数々の犯罪により死刑になると、ボビーは店の経営を引き継ぐ。そんなとき、叔父のフィルと昔の恋人のヴォニーが連れ立って店を訪れた。すっかりセレブ気取りのヴォニーを見て、ボビーは当初嫌悪感を抱くが、ヴォニーのニューヨーク滞在中に二人は頻繁に会う。ボビーがハリウッドに行った時も二人は会い、親密な時間を過ごしたが、かといってそれぞれの家庭がある中、二人が昔の恋人関係に完全に戻ることがなかった。
新年を迎える時、二人はそれぞれ別々のパーティーを楽しんでいたが、心の中では互いを想い合っていたのだった。。。
昔の恋人同士が、その後別々の人生を歩みながらも、どこか切れない心の絆で結びついているという大人のシチュエーションがとても魅力的です。
至るところにウディ・アレン監督ならではのピリッとしたジョークが散りばめられており、正にウディ・アレン・ワールド全開といったところで、個人的には、完全にツボにはまりました。
ジャズのスタンダードもふんだんに使われています。中でも♪My Romanceが大変効果的に使われています。
Cafe Society Soundtrack 09 My Romance
ところで、この作品のタイトルになっている「カフェ・ソサエティ」というのは、1930年代にニューヨークで、バーニー・ジョセフソンという人物が開設したクラブです。人種の壁を取り払って白人も黒人も集い、人民戦線の思想に共鳴した人々が集った場所だったようです。
このクラブは、ビリー・ホリデイが♪奇妙な果実を披露した場としても知られています。アメリカの共産党員でユダヤ人のエイベル・ミーアポルがこのクラブでビリー・ホリデイに出会い、ホリデイにこの歌を歌わせます。
戦後、カフェ・ソサエティは、共産主義と結び付けられて、FBIの厳しい監視を受けることになります。オーナーの兄のレオン・ジョセフソンは議会に召喚された後収監され、カフェ・ソサエティも間も無く閉店を強いられたとのこと。
この作品で登場するカフェ・ソサエティの設定は、オーナーがユダヤ人という点は一致していますが、実際とはかなり異なっています。しかし、かつて抵抗の象徴だったジャズ・クラブの名称を映画のタイトルとするところに、ウディ・アレン監督のジャズへの造詣を感じます。
とにかく、最初から最後まで夢見心地でうっとりしてしまう作品でした。