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三島紀行

静岡県の三島を中心に旅をしてきました。東京から程近く、最近ではスカイウォークがインバウンド客に人気となっていますが、案外知られていない魅力がある地域です。

 

まずは三島大社にお参りです。

三島といえば、富士山からの湧水が有名です。街のあちこちに湧水があり、水の街です。よくメディアでも取り上げられるのは柿田川の湧水です。三島駅からバスで20分くらいのところに公園が整備されており、湧水を眺められる展望台が設置されています。

それ以外にも、駅からすぐ近くの楽寿園にも、湧水による池があります。この楽寿園は、多くのこども連れで賑わっており、市民の憩いの場になっているようです。園内にある休憩所では飲食も販売されており、三島コロッケとビールを美味しく頂きました。

 

それから三島の隠れた穴場スポットであるベルナール・ビュフェ美術館へ。

ビュフェはフランスの画家で、この美術館にもしばしば訪れていたようです。この美術館は、スルガ銀行の頭取だった岡野喜一郎氏が創設したものです。近くにはヴァンジ彫刻庭園美術館という同じく岡野一族が所有する美術館があったものの、こちらは数年前に閉館しています。つまり、ベンナール・ビュフェ美術館も、スルガ銀行のゴタゴタに巻き込まれた形で苦境に陥ってしまっているのです。

かつては三島駅から無料送迎バスがあったようですが、今は廃止されたため、交通の便が悪いのが最大の難点で、行きは数少ない路線バスを使って近くまで辿り着けましたが、帰りは一キロくらい離れたバス停まで歩いてようやくバスに乗れるという立地の悪さです。

他方で、所蔵作品はなかなか素晴らしいものです。ビュフェの作品に登場する人物は顔が縦に細長く引き伸ばされ、冷めた表情をしています。ビーチでバレーに興じている絵でも、楽しいはずの場面なのに、登場人物は誰一人ニコリともしていません。

究極はキリストの受難シリーズです。処刑されるキリストも処刑する人物も一様に無表情です。処刑している人々は、処刑に関心がないようにやれやれという表情をしています。

これらの絵は、大戦後の社会の虚無感を表しているのかもしれません。若き日のビュフェがどのような思いでこの絵を完成させたのか、興味が湧きます。

 

それから、三島に程近い場所にあるのが、畑毛温泉です。伊豆箱根鉄道大場駅からバスで10分ほどの場所にある小さな温泉街です。田んぼの端っこにひっそり佇んでいる感じの温泉です。

この温泉の泉質は2種類あるようで、うち一つは温度があまり高くなく、長時間かけてじわじわと温まる感じのお湯で、とても気に入りました。

 

翌朝は、願成就院まで朝ランです。田んぼから眺める富士山がとてもきれいです。

成就院北条政子の父である北条時政が開いたお寺です。

このお寺のすごいところは、運慶の手による国宝の仏像が5体あるところです。落ち着いた表情の阿彌陀如来坐像、二体の童子を従えた不動明王像はいずれも迫力があります。

すぐ隣には守山八幡宮があります。

伊豆に流されていた源頼朝が平家追討に出発する際に祈願に訪れた場所です。647年の創建ですから、かなり由緒のある神社ですが、願成就院の人気に押されて、ひっそりとした感じです。

目を瞑ってお参りしていると、かつての頼朝の覚悟が長年の時を経て感じられるようで、感慨深いものがあります。

それから、再びランを再開して、蛭ケ島に向かいます。十四歳で流された頼朝が、その後北条政子と知り合うまでの十数年間を過ごしたとされる場所です。

頼朝というと当然鎌倉を思い出すのですが、頼朝という人間を育んだのはむしろ伊豆のこの辺の地であったと言えるかもしれません。

 

この近くに大場という駅があり、少し散策してみました。ちょっと行ってみたい大場神社という小さな神社があったからです。

大場神社には小さな像がポツンと置いてあります。


三島市郷土資料館のホームページによれば、この辺も明治維新の頃、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れたようで、この道祖神もその被害を受けたようです。というのも、廃仏毀釈でこの道祖神の首が切り落とされ、後年になって新たな首が付けられたようです。そう言われてみるとそんな感じがしますね。道祖神の穏やかな表情と廃仏毀釈で首を切り落とされた史実を結びつけると、やるせない気持ちになります。

歴史の小箱 | 三島市郷土資料館

 

この日は、修善寺温泉に立ち寄り、修善寺と隣にある日吉神社を参拝しました。

 

その後、熱海のMOA美術館に久々足を運んでみました。駅からバスですぐの高台にあり、海を一望できます。カフェからも絶景を堪能できます。

長いエスカレーターを登ったところに展示スペースがあり、この日は葛飾北斎富嶽三十六景の展覧会をやっていました。北斎の絵と現在の写真を並べて展示していたのは、なかなか面白い工夫だと思います。

 

こうして、三島近辺の神仏とアートを探求するちょっとした旅は充実したものとなりました。お詣りとアートは旅のテーマとしてベストな組み合わせかもしれません。