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エドワード・アンダースン「夜の人々」

かつてレイモンド・チャンドラーが、いままでに書かれた最高な犯罪小説の一つと称賛したとされる作品、と言われれば、手に取らざるを得ません。その前振りに違わず、深い余韻を残す味わい深い作品です。

 

刑務所を脱獄した三人の男、Tダブ、チカモウ、そして主人公のボウイは、銀行強盗によって大金を手にする。ボウイは逃亡中に知り合ったキーチーという若い女と恋仲になり、逃亡生活を送る。

やがてTダブは殺され、チカモウは再び刑務所に入れられる。ボウイはチカモウの救出を企てたが、それが仇になって居場所がバレて、キーチーと共に銃殺された。。。

 

逃亡生活の中でキーチーがようやく子どもを授かった矢先に二人とも殺されるラストがあまりに悲しすぎます。ボウイは世間では極悪の犯罪者とみなされて追われていたわけですが、キーチーを思いやる優しい人間でもあり、そのギャップがやるせなさを誘います。

この作品では、キーチーがとても印象的なキャラとなっています。健気にボウイの後を追い、そして一緒に銃殺されるという生き方が何とも切なすぎます。キーチーという登場人物が作品全体のカラーを決めていると言えます。

 

文章は多少読みにくい面もありましたが、チャンドラーが激奨しただけある素晴らしい作品でした。