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フリーマントル「殺人にうってつけの日」

 

殺人にうってつけの日 (新潮文庫)

殺人にうってつけの日 (新潮文庫)

 

 仲間に裏切られて長年収監され、しかも自分の妻までも取られてしまった元スパイの壮絶な復讐劇を描いた作品です。

 

元CIA工作員のメイソンは、元KGBのスレイターに裏切られ、妻のアンも奪われてしまう。メイソンは15年間監獄での生活を送りながら、2人への復讐を誓う。

一方、スレイターはアンとの間に生まれた息子のデイヴィッドと3人で幸せな日々を送っていたが、メイソンが保釈されたという一報を受けてから、アンは、メイソンが殺しにくるのではないかという恐怖に怯える日々を送ることになる。

 

それが現実となり、息子のデイヴィッドは何者かによって轢き逃げされ、命を落とす。アンの経営する画廊の防犯カメラには、メイソンが映っていたことに気づき、アンは益々恐怖におののく。その話をスレイターにしたところ、アンの精神状態が不安定であるとしてなかなか取り合わず、2人の間には次第に亀裂が生じる。

 

メイソンは着々と2人の殺害計画を準備する。殺害場所はデイヴィッドが眠る墓地と決める。メイソンはアリバイ作りのために、カリフォルニアと東部を行き来する。

 

ついにメイソンは殺害を実行に移そうとしたそのとき、メイソンはFBIに囲まれていた。メイソンにとどめを刺したのはアンだった。隣にいたスレイターは身動きできず、そのことで2人はその後別の道を歩むことになる。。。

 

 

周到な準備を重ねてきたはずだったのが、最後の実行失敗がなんともあっけなく、唖然としてしまいます。

メイソンはあえなく命を落としましたが、生き残ったアンとスレイターも、子供を無くした上に、2人の心は離れてしまい、どちらにとってもハッピーエンドとは言えない結末になっています。

 

結局、裏切りによって、誰も幸せにはなれないということなのかもしれません。

 

淡々と進んでいく独特に筆致は、さすがフリーマントルの作品という感じでした。