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映画、書評、ジャズなど

「es(エス)」★★★★

 

es[エス] [DVD]

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 2001年のドイツ映画です。スタンフォード大学で実際に行われた実験をモチーフに描かれた作品です。公募で集まった被験者たちが看守と囚人に分かれ、一定のルールの下で与えられた役割を演じていくのですが、だんだんと行動がエスカレートしていき収集がつかなくなるというシンプルなストーリーですが、含蓄に富んだテーマです。

 

タクシー運転手のタレクは、大学の実験の公募を新聞で見つけて応募する。2週間の拘束で4千マルクを得られるという一見おいしい話だった。タレクは以前勤務していた雑誌社との間で、潜入取材の報酬を得ることを約束を取り付けた。

タレクは囚人側に割り振られた。最初は皆和気あいあいとした雰囲気で進んでいく。タレクはカメラが埋め込まれた眼鏡を使って取材を試みる。タレクは記事の価値を高めるためにわざと看守側を挑発するのだが、これが看守側の行動をエスカレートさせてしまうことに。

看守側はタレクを拷問にかけるとともに、言うことを聞かない囚人側の人々を拷問にかけることに。そして、実験の責任者のトーン教授が会議で不在の間、看守たちは実験を主催する研究者たちを拘束し始める。

トーン教授は緊急事態に気付き慌てて戻るが、そのときには既に犠牲者も出ていた。囚人たちは何とか脱走を図り、看守側の暴走をようやく食い止める。。。

 


Experiment (2001) - trailer

単なる出来レースの実験のはずが、やってみると権力を握った人たちによる大暴走につながってしまうというのがこの作品の流れです。この実験の参加者は、報酬を手に入れるために軽い気持ちで実験に参加したわけですが、主催者によって途中で離脱させられないよう、実験の主催者の意向に忠実に従ったことで、行動がエスカレートしてしまったわけです。

これは実社会でも全く同じことが起こっているように思います。実際の刑務所でも看守たちが囚人にリンチを加えることがあったり、部活動の中で先輩が後輩をリンチするような事件があったりするのも、いったん足を踏み入れた組織から排除されることへの怖れ、上から自分の存在や役割を認められたいという過剰な意識、与えられた責任を果たそうという心理が過剰に歪んだ形で発露すること等々の理由から、エスカレートしてしまう可能性が常にあるわけです。かつて連合赤軍などにおいて激しいリンチがありましたが、その心理も本質的には一緒かもしれません。

 

また、別の見方をすれば、この作品は、人間社会における権力関係も、本質的にはある種のゲームのようなものなのかもしれないということを認識させてくれます。

 

そういう意味で、この作品中の実験というのは、人間社会における権力関係や権力の本質を極めてシンプルに表しているような気がしており、ある意味、背筋の凍る思いがしました。