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映画、書評、ジャズなど

「午後の遺言状」★★★★

午後の遺言状 [DVD]

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 久々の日本映画ということで、新藤兼人監督による1995年の作品です。新藤監督が83歳頃に制作された作品ということになりますが、「死」を強く意識した作品となっています。

 女優の森本蓉子(杉村春子)は、森の中の別荘に滞在に来る。その別荘の管理人の豊子(乙羽信子)とその娘のあけみと3人で滞在しているところに、蓉子の女優友達の登美江とその夫が別荘を訪ねてきた。登美江は認知症にかかっており、蓉子が一緒に演じたチェーホフの「かもめ」の話をすると、それを思い出している様子だった。

 そんなとき、別荘に脱獄囚が強盗に押し入ってくる。登美江は毅然と対応したことで、警察署から表彰を受ける。

 登美江夫は数日間の滞在の後、別荘を去っていく。その数日後、登美江と夫が入水自殺を図ったことが、あるルポライターから知らされる。蓉子と豊子は登美江の足跡を辿る。

 その後、豊子の娘あけみの結婚が決まるが、豊子はあけみが蓉子の亡くなった夫との間にできた不倫の子供であることを蓉子に伝える。蓉子は動揺する。

 蓉子は、別荘を離れて東京へ戻っていった。。。。

 最後の場面で、豊子は、蓉子が自分が死んだときに棺桶の釘を打つために河原で拾ってきた石を川に投げ捨てます。この石は作品の始めの方で蓉子が川で拾ってくるのですが、その存在自体が作品全体に「死」を意識させます。

 途中、豊子の娘のあけみの「足入れ式」の場面が出て来ます。これは初夜の予行演習の儀式のようですが、「死」の雰囲気が漂う作品の中で、あけみの存在だけが唯一「生」の象徴となっています。

 晩年を迎えた監督にしか描けない深い作品だと思いました。