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「黒いオルフェ」★★★★

黒いオルフェ(ポルトガル語版) [DVD]

黒いオルフェ(ポルトガル語版) [DVD]

 高台からリオの海岸線を望む映像美がとても素晴らしい作品です。タイトルの曲は多くのジャズ・ミュージシャンたちが演奏し続けるあまりにも有名な曲です。ギリシア神話のオルフェとユリディスの話をモチーフにした作品です。

 ユリディスはカーニバルが開かれる前夜のリオに、何者かに追われて身の危険にさらされながら、いとこを探してたどり着いた。リオの街中で言われるがままに飛び乗った電車の運転手がオルフェだった。ユリディスの従姉妹のセラフィーナの家は偶然オルフェの隣だった。オルフェはミラという女とちょうど婚約したばかりであったが、ユリディスとの出会いに運命を感じ、2人は結ばれる。

 ところが、ユリディスを追う覆面の男がユリディスのもとに忍び寄っていた。カーニバルの当日、ユリディスはセラフィーナに変装して踊っていたが、覆面の男はそれに気づき、ユリディスを追いかけ、路面電車の車庫に追いつめた。ユリディスを救おうとオルフェもそこにやってきたが、車庫の電気を着けた途端、ユリディスは感電して命を落としてしまう。

 その後オルフェは、死体安置所に安置されたユリディスを探し廻り、ようやくユリディスを見つけた。オルフェはユリディスの遺体を抱き上げ家に戻るが、そこには怒り狂って家に火を放った婚約者ミラがいた。ミラが投げた石がオルフェに当たり、オルフェはユリディスの遺体共々崖下に転落していったのだった。。。


 この作品はアントニオ・カルロス・ジョビンルイス・ボンファが音楽を担当しており、このことがこの作品を不朽の名作に仕立てていると言えます。

 冒頭からいきなりテンポ良く♪Felicidadeが流れます。

 特に有名なのは通常♪黒いオルフェ(カーニバルの朝)でしょう。

 オルフェとユリディスの遺体が崖下に転落した後、最後の場面で子どもたちが陽気に唄い踊っている場面は、悲劇であるこの作品の後味を良くしています。

 とにかく、ボサノヴァ好きにはたまらない作品です。

 演技もどこか素人っぽさが漂っていると思ったら、いずれの役者さんも演技経験のない方ばかりだそうです。

 作品全体に漂う知的な雰囲気は、当時サンバで庶民が熱狂するブラジル社会でボサノヴァが誕生したときの雰囲気を良く表しているような気がします。