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セザンヌ展&エルミタージュ美術館展@国立新美術館

 国立新美術館で、大きな展覧会が同時開催されています。今回は短時間でざっと巡ってみましたが、多くの素晴らしい作品が展示されていました。

セザンヌ

 セザンヌ後期印象派として知られる画家で、残した絵は、風景画からお皿にリンゴがのせられた絵まで非常に多岐にわたっていますが、この展覧会を見ると、セザンヌがなぜこうした絵を描いたのかを良く理解することができます。

 セザンヌは戸外に滞在して、“構築的筆触”という手法を用いた風景画を描くようになります。それは従来の印象派とは違い、絵の画面に秩序を与えようとするものです。それは、

印象派の世界から美術館の作品のような堅固なものを創り出すこと」

という彼の言葉に象徴されています。

 セザンヌは、風景画において秩序ある空間構成を目指しただけでなく、リンゴやコップ、お皿にも秩序ある構図を求めます。

「リンゴ1つでパリを驚かせたい」

という彼の言葉は、こうした普段何気なく存在しているものも、画面の中で画面の中央に向かうように秩序立てて配置されることによって、見る者を圧倒する効果があることを表しています。

 このように、一見あまり関連性がないように思われるセザンヌの風景画と静物画には、構図という視点で見ると、共通性が見出せることが分かります。

エルミタージュ美術館

 エルミタージュ美術館の豊富な所蔵品の中から展示がなされていますが、年代別に展示されているため、西洋絵画の歴史を一覧できる点が特徴的です。

 エルミタージュ美術館といえば、ソクーロフ監督による『エルミタージュ幻想』が想起されます。この作品はワンカットで撮影されているもので、フランス人外交官が映画監督と一緒に美術館を巡るという内容です。今回の展覧会は、さすがにエルミタージュ美術館で見るのとは比べるべくもありませんが、エカテリーナ女帝の肖像画などは、その重みに思わず圧倒されてしまいます。

 こうした大きな展覧会が同じ美術館で同時開催される機会というのは少ないでしょうから、今は国立新美術館に足を運ぶチャンスといえるかもしれません。