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「アパートの鍵貸します」★★★★☆

 ビリー・ワイルダー監督のセンスがさえ渡った小気味よいテンポの良作です。

 バクスタージャック・レモン)は、大手保険会社に勤務する平社員だが、会社の重役たちの浮気のために自分の部屋を貸すことで、重役たちに重宝がられ、徐々に出世の道を歩んでいく。

 バクスターはエレベーター・ガールのフラン(シャーリー・マクレーン)に惚れるが、フランはバクスターの上司であるシェルドレイクの浮気相手だった。妻子持ちだったシェルドレイクは離婚をちらつかせながらフランを口説いていたが、フランは同じような手口で過去にも多くの女性を泣かせていたことを知り、フランは睡眠薬を飲んで自殺を図る。その自殺を図った場所がバクスターの家だった。

 バクスターの必死の看病によってフランは一命を取り留めた。そしてバクスターは、フランを自分が責任をもって引き取ることを決意したが、その前にシェルドレイクが離婚してフランとくっつくことを決心していた。

 その後バクスターは、シェルドレイクから感謝されて重役の地位を得たが、もうアパートの鍵を貸すことに嫌気がさし、フランと泊まるために部屋の鍵を要求するシェルドレイクに反抗して退社することを決意した。

 年が明ける頃、フランはシェルドレイクからバクスターの話を聞き、そのままバクスターのもとに駆け込んだのだった。。。


 なんとも清々しいハッピーエンドだけでも素晴らしいのですが、ビリー・ワイルダー監督の作品は実によくシナリオができています。例えば、バクスターが隣人の医者から献体を依頼された話がその後も物語の随所に効果的に登場したりするなど、機知に富んだ全体構成となっています。

 エンディングも、最後フランがバクスターとくっつくであろうことは見え見えでありながらも、白々しさは一切なく、フランがバクスターのもとに駆け込むのが極めて自然体で説得力ある展開となっているところはさすがです。

 コメディ映画監督の最高峰のビリー・ワイルダー監督のセンスが思う存分発揮された作品です。こういう作品は時代を超えて楽しめますね。