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「キサラギ」★★★★☆

 銀座シネパトスで、遅ればせながら「キサラギ」を見てきました。正直、事前の予想をはるかに超えてかなり面白かったです。

 アイドルの如月ミキが亡くなってからちょうど1年経った日に、インターネットの掲示板を通じて知り合った如月ファンの5人がとある小部屋に集まった。如月は自殺されたと思われていたが、5人が話しているうちに、自殺説が疑わしくなってくる。さらに、彼らの正体が明かされていくとともに、真犯人の追及が行われる。そこには思わぬ展開が・・・。

 本作品は、いわゆるワン・シチュエーションドラマで、基本的には小部屋における5人の掛け合いで映画が構成されているわけですが、こうした映画の成否を鍵を握るのは何と言っても脚本です。この作品も、何と言っても脚本のできが素晴らしかったです。最初から最後まで全く飽きさせないテンポの良い映画の進行が秀逸です。

 ワン・シチュエーションドラマには、三谷幸喜脚本の陪審制をモチーフにした「12人の優しい日本人」★★★★などがありましたが、こうした裁判ものではなく、アイドルの1周忌にファンが集まって、死の真相について議論を展開するという奇抜な発想がまず面白い。しかも、インターネットを通じて集まったメンバーは、当然当初は互いに素性が分からないわけですが、議論をしている中で次第に素性が判明していくという設定も、あっと言わせる展開を演出するのに大変効果的だったと思います。

 あえて残念な点を指摘するとすれば、最後まで如月ミキの素顔が登場しないような工夫ができなかったものかと感じました。アイドルは“虚像”であるという点が映画全体を通じて強調されてきたので、最後素顔が登場したのは少し興ざめではありました。また、キャスティングはよくできていたと思うのですが、小栗旬小出恵介のキャラが多少ダブっていたかな、という気がしました。ちなみに、塚地は余人に代え難いなかなかのキャラだと思います。

 近年の邦画の中でも最高傑作の1つに位置付けられると言っても過言ではない作品でした。