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「マグノリアの花たち」★★★★☆

 先日、ムービープラスで放送されていた「マグノリアの花たち」という映画を見ましたが、なかなかよい映画だったので御紹介します。

 映画の舞台はルイジアナ州の田舎町で、6人の女性を中心として小さなコミュニティの中で繰り広げられるドラマを描いたものです。

 ジュリア・ロバーツ演じるシェルビーは、糖尿病を抱えている身で、ある弁護士と結婚します。そして、医者から妊娠を止められているにもかかわらず、身の危険を冒して子供を出産しますが、出産の際に腎臓に負荷がかかり、シェルビーの母親のマリン(サリー・フィールド)から腎臓の提供を受けたものの、結局亡くなってしまします。

 この物語のあらすじは端的にいえばこれだけなのですが、これに、同じ町で美容室を経営するトルービィ(ドリー・バートン)とそこで雇われているアネル(ダリル・ハンナ)、町長の未亡人のクレリー(オリンピア・デュカキス)、偏屈者の未亡人ウィザー(シャーリー・マクレーン)らが加わって、物語の枝葉を構成しています。

 正直、映画の前半は、登場する女性たちの繰り広げるトークのオンパレードにやや辟易してしまうのですが、後半に入ると、物語は俄然深みを増してきます。シェルビーが子供や母親を置いて亡くなった後のシーンでは、悲嘆に暮れている母親マリンに対して、クレリーとウィザーが冗談を言い合って励まし、結局マリンにも笑いが戻る場面は、名シーンでしょう。

 そして、美容師のアネルは、シェルビーの結婚パーティーの際に出会った夫との間に子供が生まれたら、シェルビーと名前を付けたいと告白しますが、それを聞いたトルービィは、次のように言います。

「そうやって時は流れていくのね」

 この言葉こそ、この映画の伝えようとしているメッセージを端的に表していると言えます。

 つまり、人間のコミュニティというのは、個々の人間の死を乗り越えながら後世に受け継がれていく、そして、たとえ悲しい出来事があってもユーモアの力で克服できる、そうこうしているうちに時間というのは悲しみを消し去りながら過ぎていく、この映画はそんな前向きなメッセージを発しているように思えます。

 ラストの空中から撮影したシーンは、音楽と合わせて、感動的でした。

 見終わった後の後味が大変良い映画でした。