テオ・アンゲロプロス監督の1990年の作品です。姉と弟の兄弟がギリシアから父親がいる(と2人が思い込んでいる)ドイツを目指して旅するというストーリーですが、一貫して陰鬱な空気に覆い尽くされています。
姉のヴーラと弟のアレクサンドロスは、駅に足を運んではドイツに向かう国際特急に乗ろうと試みる。やっとの思いで列車に飛び乗るも、無賃乗車で途中で降ろされる。叔父を頼るが、預かれないと言われ、二人は途方にくれる。
そんな中、旅芸人の一行と出会う。運転手のオレステスは、二人の面倒を見てくれる優しい青年だった。しかし、二人はオレステスの元を離れ再びドイツに向かう。ヴーラはトラックの運転手に暴行される。そして再びオレステスと再開する。オレステスは愛車のバイクを売り、二人をディスコに連れていくが、二人は列車でドイツを目指す。
二人は国境にたどり着き、ボートで対岸に渡る。銃声が鳴り響き、二人は霧に中の平原に立っている。そして、一本の木に向かって歩いていく。。。
作品を通して厚い雲に覆われ、舞台が地中海に臨むギリシアとはとても思えません。
存在しない父親にひたすら会いに向かう子供達の姿は、痛々しいばかりです。特に姉のヴーラが、心無い中年男性に犯され、自ら身体を売ろうとしてまで生き抜こうとする姿は何ともいたたまれない気持ちにさせられます。
湖に浮かぶ巨大な手の甲は何を暗示しているのか??不思議な感覚に陥ります。
決して心地よい余韻が残るような作品ではありませんが、この独特な空気感を醸成しているのは、さすが巨匠の作品だという納得感もあります