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「エレニの旅」★★★★

 

エレニの旅 [DVD]

エレニの旅 [DVD]

 

 

第二次大戦に巻き込まれたギリシア人の難民を描いた作品です。

始めから終わりまで終始重苦しい空気に包まれており、主人公のエレニも泣き崩れてばかりの作品です。

 

ウクライナ黒海に面した都市から住む場所を追われて放浪するギリシア人の難民たち。その中に、幼いエレ二もいた。一行はギリシアの地にニューオデッサ村を築く。エレ二は、一行のリーダーであるスピロスの養女として育てられたのだが、スピロスはエレニと結婚することに。しかし、結婚式当日、エレニは、スピロスの息子アレクシスとテサロニキに逃げてしまう。

その後、エレニとアレクシスの間には、もともと双子の息子を設けていたが、スピロスにばれることを怖れ、養子に出していた。やがて、2人の息子を引き取り、一緒に暮らすことに。

アレクシスは、アコーディオン演奏で生計を立てていたが、アメリカで演奏する誘いを受けるが、悩んだ末、結局、アメリカ行きを決意する。

やがて、戦争が本格化する中、2人の息子も戦争に駆り出される。アレクシスもアメリカで軍人となり戦争に参加する。

エレニは1人残され、家族の心配をする日々を送る。アレクシスは沖縄で出撃し死亡。そして、戦場で息子の亡骸を見つけ、泣き崩れるのだった。。。

 

 

 とにかく、長くて暗い作品であることは否めないのですが、戦争で住む場所を追われるということは、それだけ陰鬱で悲惨なものだということなのでしょう。

そうした中で、女性こそがもっともつらい思いを強いられているともいえます。エレニも正にそうした戦争の被害者の1人ですが、他方で、涙にくれつつも、愛する家族のために必死になって生きようとする生命力も感じます。

 

近年のクリミアを巡る紛争を見ても分かる通り、黒海の近辺は多くの民族が共生する複雑な地域ですから、一旦戦争に巻き込まれると、こうした難民の問題が噴出するわけです。そんな悲惨さがこれでもかというほど描かれています。

 

この後に作成された『エレニの帰郷』が当初予定されていた3部作の2番目に当たるようですが、これがテオ・アンゲロプロス監督の遺作となったようです。

 

この監督の作品としては、過去に以下の作品を鑑賞しました。

 この作品も、静かに淡々と物語が進む中で、国家の争いの中で翻弄される人々を描いています。

 

ハリウッド作品のように決して大衆受けする作りではないのですが、映画の一つのスタイルを突き詰め、究めているように思います。