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映画、書評、ジャズなど

「ブリッジ・オブ・スパイ」★★★★☆


映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(120秒)

監督がスピルバーグ、脚本はコーエン兄弟、主演がトム・ハンクスという豪華スタッフと聞いただけで、見ざるをえなくなる気分にさせられますが、期待に違わず素晴らしい作品です。

 
時は米ソが激しい冷戦を繰り広げていた1950年代後半から60年代にかけての時期。アメリカに絵描きとして滞在していたロシア系英国人のアベルソ連のスパイとしてFBIに逮捕された。その弁護を任されたのが、弁護士のドノヴァン(トム・ハンクス)だった。ドノヴァンは、アベルの死刑を回避することに成功したが、世間からは批判されることに。
ちょうど同じ頃、アメリカの偵察機ソ連に撃墜され、パイロットのパワーズがソ連の捕虜となる。また、ベルリンでは米国人大学生のプライヤーが、東独に拘束される。
そこでソ連側との捕虜交換交渉を政府から依頼されたのがドノヴァンだった。ただ、あくまで民間人の立場での交渉だった。
ドノヴァンは家族にも秘密でベルリンに乗り込む。大使館の職員からは、あくまでパワーズの返還を最優先にするように言われたが、ドノヴァンはパワーズとプライヤーの2人とアベルの交換を目指して交渉する。しかし、ソ連にはプライヤーの管理権限がなく、国家として認められたい東独は、アベルとプライヤーの交換を求めてくるという難しい交渉に。
ドノヴァンは1対2の交換を目指して賭けに出る。グリーニカー橋の上でアベルとパワーズを連れて行き、プライヤーが別の検問所に連れてこられたのが確認出来次第、交換を実行するというものだった。
アベルとパワーズが約束の場所に到着した後も、プライヤーの到着はなかなか確認できない。米大使館の職員は1対1の交換を急ぐが、ようやうプライヤーの到着が確認され、無事1対2の捕虜交換が成功する。。。
 
史実に基づいてるだけあって、リアリティに溢れています。米ソが互いにスパイを送り込んでいる中で、スパイを捕らえて死刑にすればよいという単純な状況でないことがよくわかります。また、米ソに東独が絡んでくることで、返還交渉が一筋縄ではいかなくなるというのも興味深い点です。
 
そして、この作品は何よりも脚本の秀逸さに目を奪われます。例えば、アベルは、ソ連側に引き渡される直前、ソ連側の対応が、抱擁で迎えるか、車の後部座席に乗せるかで、彼の今後の運命が分かるとドノヴァンに言うのですが、結果は、パワーズが抱擁で迎えられたのに対し、アベルは抱擁もなく、車の後部座席に両脇を固められて送られていきます。アベルの運命がどのようになったか心配な気持ちにさせられますが、その後余生は全うしたようで、対照的にパワーズは、程なくしてヘリコプター事故で命を落としたとのこと。
 
また、ドノヴァンは家族にベルリンに向かうことを家族に告げず、ロンドンに行くことにしていたのですが、帰宅すると妻は期待したお土産がなかったことで気分を害します。しかし、テレビでドノヴァンがベルリンの交渉に臨んでいたことを知り、疲労で着替えもせずにベッドに倒れこんだドノヴァンに妻は温かい眼差しを注ぐ。何ともうまい演出です。
 
新年早々、いい作品に出合いました。