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映画、書評、ジャズなど

「恋のロンドン狂騒曲」★★★★☆

 ウディ・アレン監督による2010年の作品です。さすがのセンスでユーモアに溢れた深みのある人間ドラマに仕上がっています。

 夫のアルフィーと妻のヘレナは、老年になって急遽離婚する。アルフィーが老後の孤独への不安から若返りを図ったことが原因だった。アルフィーは体を鍛え、若者に混じってクラブへ通ったりする。一方、ヘレナは占い師のクリスタルにはまり、クリスタルの言葉を過剰に信じるようになる。

 アルフィーとヘレナの娘のサリーは、売れない作家のロイと結婚しているが子供ができずイライラしている。ロイは出版社に提出した原稿の採択結果を待っていて落ち着かない中、隣のアパートに住む若い女性ディアに惹かれる。サリーは著名なギャラリーのオーナーグレッグの秘書の職を得て、オーナーに心を惹かれる。

 やがて、それぞれの生活に変化が。アルフィーは若い女性のシャーメインと結婚する。アルフィーはシャーメインと売春がきっかけで知り合ったのだった。しかし、2人の関係はうまくいかなかった。ヘレナも同じ占いを通じて知り合ったジョナサンと意気投合する。ジョナサンは亡くなった妻がいたが、その妻の了解が得られず、なかなか結婚できなかった。

 ロイの原稿は結局出版されなかったが、あるとき、ロイの友人の作家が交通事故で死亡したという知らせが入ってくる。その友人は中の良かったロイに自分の作品原稿を渡して見てもらっていたのだが、その原稿の出来が良かった。ロイは友人の家から原稿を盗み出し、自分の作品として出版社に送ったところ、大変な好評で、あっという間に出版が決まる。ロイはディアとの関係も深まり、ディアは婚約者との結婚を直前で破棄した。ところが、死んだと聞いていたヘンリーは、実は昏睡状態であり、回復の可能性があることが分かる。ヘンリーは病室を仲間たちと訪ねるが、回復の兆しが見えるたびにドキドキした思いにかられた。

 サリーとグレッグとの関係は結局深まることはなく、グレッグのギャラリーを辞めて、新たにギャラリーを立ちあげることを決意するものの、あてにしていた母親ヘレナからお金の工面を断られてしまう。

 新妻との生活に懲りたアルフィーはヘレナに寄りを戻すことを提案する。。。

 登場人物それぞれのキャラクターや行動がとても良くできており、巧みな心理描写もさすがウディ・アレン監督です。ドタバタ劇の背後で冷静なナレーションが流れるというお馴染みのパターンにより、登場人物たちが必死な思いで悩み、迷いながら行動している様子が何かとてもコミカルでたいしたことでないように見えてくるような仕掛けになっています。

 映画の終わりの部分で、次のようなナレーションが流れます。

「人は思い悩むものだ。
 “人生の不安と苦痛にいかに対処すべきか”と
 サリーがロイに言ったように
 薬より幻想が効く場合もある」

 人生のドタバタを少し高みから見下ろし、クールかつ楽観的な視線を投げかけているところが、ウディ・アレン監督の作品の魅力と言えます。

 なお、映画の中で効果的にジャズの音楽が使われているところがいいですね。