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映画、書評、ジャズなど

民主主義の機能不全?

政治

 ここ数日間の世界の政治情勢を見ていると、米国の債務上限問題、ユーロ危機、そして日本の首相退陣問題等々、どこか民主主義という仕組み自体が機能不全に陥っているという印象を受けてしまいます。

 エコノミスト誌がTurning Japaneseという刺激的な標題とともに、和装したオバマ大統領とメルケル首相という刺激的な表紙が飾られいます。
http://www.economist.com/node/21524874

 これはバブル崩壊以降の日本における政治決断の遅れを引き合いに出しているものですが、要するに日米欧いずれの地域においても、政治がリーダーシップを発揮できず、世論に迎合せざるを得ない状況が生まれているのです。しかも、それはリーダーのパーソナリティの問題というよりも、政治構造の問題だというわけです。

Sometimes crises beget bold leadership. Not, unfortunately, now. Japan has mostly been led by a string of weak consensus-seekers. For all their talents, both Mr Obama and Mrs Merkel are better at following public opinion than leading it.

The problem lies not just in the personalities involved, but also in the political structures.

 世界の現在の民主政治を見ていると、リーダーシップを持った決断ができない仕組みとなっているように見受けられます。とりわけ、日米では議会にねじれが生じている状況ですので、なおさらです。かたや野党との違いを出さなければならない反面、ねじれ状況下ですので、野党の意見も踏まえながら妥協もしていかなければならない。だから、リーダーの強いリーダーシップを期待すべくもありません。

 また、本来の政治というのは、リーダーが強いリーダーシップを発揮しながら、世論を形成していく姿であるべきですが、近年の政治を見ていると、神経質に世論調査を気にしながら、政策を打ち出しているように見えてしまいます。

 かつてプラトンデマゴーグを厳しく喝破したように、民主政治にとっての最大の敵はポピュリズムです。こうした民主政治の負の面が今、政治の前面に押し出されているような気がするのです。

 特に日本の民主党政権は典型的です。民主党の政治を見ていると、短期的な内閣支持率アップばかりを狙った政策ばかりが目立ちます。子ども手当は言うまでもなく、TPP参加、反原発等々、いずれも長期的な展望なく、短期的な人気取りのために打ち出された感を受けてしまいます。

 ようやく念願の政権奪取を果たした民主党がその地位を何とか維持したいという気持ちになるのは分かりますが、それにしても、人気取りの思惑があまりにも見え見えで、白々しく感じてしまいます。

 菅総理はかつての小泉総理の手法を念頭に置いているようですが、この両者の違いは、自ら世論を形成したかどうかでしょう。郵政民営化が良かったかどうかは別として、小泉総理は国民に対する強烈な発信力をもって自ら郵政民営化の世論を形成する強いリーダーシップを持っていました。これに対して、菅総理は、世論受けしそうな政策に手当たり次第飛びついている感じを受けます。

 つまり、民主主義のもっとも悪い側面、プラトンが最も危惧した側面が、今の日本政治には出てしまっているのです。

 ロバート・ダール教授のいうように、民主政治は「瑣末事」にのみかかわるもの、という指摘はそのとおりかもしれません。本来、大胆な政治決断は民主政治とは縁遠い位置にあるのかもしれません。そうした決断を民主政治の中で行うためには、相当な国民の支持を得ることが必要なのでしょう。

 米国の債務上限問題や日本の特例国債法案の議論を見ていると、まっとうな結論を得るまでにいかに時間がかかるのかがよく分かります。

 ウィンストン・チャーチルが、民主主義は最悪の政治形態である、これまでのあらゆる政治形態と除いて、、、という趣旨の言葉を述べていますが、今、その言葉の重みが分かるような気がします。