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「華麗なる賭け」★★★★☆

 音楽、画面構成、ストーリーがとにかくスタイリッシュでかっこいい作品です。とても1968年の作品とは思えません。

 裕福なトーマス・クラウン(スティーヴ・マックィーン)はスリルを求めて銀行強盗に精を出している人物で、顔も知らない数人の手下を巧みに操って銀行強盗をまんまと成功させる。ところが、この捜査の過程で、保険会社のビッキー(フェイ・ダナウェイ)は、トーマスが黒幕であると感づいた。ビッキーはトーマスに巧みに近づき、トーマスを犯人と疑っていることを伝える。2人は交際を始めるが、やがて互いに本気になっていく。
 トーマスはもう一回銀行強盗をやるチャンスをくれるようビッキーにお願いする。トーマスは無事銀行強盗を実行し、前回同様、墓地にお金を拾いに来るところを警察とビッキーは待ちかまえていた。しかし、実際にやってきたのはトーマスではなく、トーマスからビッキー宛の手紙を携えてきた若者だった。トーマスは、ビッキーにお金を持って一緒に自分の元へ来るよう誘っていた。その頃トーマスは、海外へ逃亡する飛行機の中で煙草を燻らせていた・・・。

 この作品のカメラワークは実に見事です。最初の銀行強盗のシーンでは、トーマスに雇われた数人の実行犯たちは互いに顔も知らず、トーマスも電話で彼らに指示を伝えていた。そのシーンが、いくつにも分割された画面で同時並行的に進行していく様が描かれていて、臨場感を醸し出しています。

 また、音楽も素晴らしく、ミッシェル・ルグランによる主題歌の「風のささやき」が映画のムードを決定しているといっても過言ではありません。トーマスの何か刹那的な生き方を象徴しているようで、とても独特の雰囲気を醸し出しています。 また、映画の中には印象に残るシーンが数多くあります。スティーヴ・マックィーンフェイ・ダナウェイがチェスの対戦をするシーンは、緊迫した中で2人が互いに魅せられていく様子が実にうまく描かれています。そして、最後のスティーヴ・マックィーンが機中で煙草を燻らせているシーンは実にかっこいいです。

 見終わった後に何とも言えない重厚感が残る名作です。