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映画、書評、ジャズなど

「インファナル・アフェア」★★★★★

インファナル・アフェア [DVD]

インファナル・アフェア [DVD]

 この作品については以前も一度書いたことがありますが、香港映画ではおそらくや最高峰に位置するであろう素晴らしい作品で、何遍繰り返し見ても、そのたびにため息が出るほど関心してしまいます。

 ラウ(アンディ・ラウ)はマフィアのボスであるサム(エリック・ツアン)から警察組織にスパイとして送り込まれる。他方、同じ時期にヤン(トニー・レオン)は警察官の訓練を受けている途中でウォン警視にその才能を見込まれ、マフィア組織に送り込まれた。

 2人は互いにそれぞれの組織の情報を内密に自らの真のボスに流していた。ある時、マフィアのボスのサムはタイの麻薬商人との取引に臨み、あと一歩で麻薬を手にするところで、警察に踏み込まれて取引は失敗に終わる。この件で、サムとウォン警視はそれぞれ、自らの組織の中にスパイが紛れ込んでいることを悟ったのだった。

 警察に送り込まれたスパイであるラウは、マフィアに送り込まれたスパイを突き止めるために、自らの警察の上司であるウォン警視を尾行させ、スパイと会うところを押さえようとする。この件でウォン警視はマフィアに殺されてしまう。ラウはウォン警視を殺したマフィア組織に嫌気がさす。
 ラウはウォン警視が残した携帯からヤンに電話し、2人は対面する。しかし、ラウは自分がスパイであることを誰にも悟られていなかったが、ヤンはふとしたことからラウがマフィアから送り込まれたスパイであることを悟ってしまったことから、ラウはヤンの履歴を警察のデータベースから抹消してしまう。

 ヤンは結局殺されてしまうのだが、殺される前に精神科の女医であるリー(ケリー・チャン)に託した証拠によって、死後、本当は警察官であることが判明し、名誉が回復される。
 ラウはマフィアのボスのサムを殺害し、ラウがマフィアの人間であることを知る人間は誰もいなくなった。ラウは警察官として生きていくことを決意する・・・。


 ちなみに、中国ではこの作品の結末(つまり、スパイが警察組織で生きていくことを決意すること)が気にくわなかったようで、結末部分が変わっているようです。

 この作品の素晴らしいところは、人物の心理描写が実に繊細に組み立てられている点です。マフィア組織から送り込まれたラウは、当初はマフィア組織に忠誠を誓って行動しているのですが、警察組織に長らく身を置くうちに、その上司であるウォン警視にシンパシーを抱くようになり、ウォン警視がマフィアの手で殺されたとき、マフィア組織と決別することを決意するというシナリオは何とも巧妙です。しかも、ウォン警視が殺されたのはラウがウォン警視に尾行をつけさせたことが発端だったのです。
 冷静沈着で情をかなぐり捨てているはずのスパイが、何かのきっかけで内に秘められた情に溢れた人間性を表にさらしてしまうという設定は、スパイ物の作品の常道ですが、ここにスパイ物の醍醐味があると言っても過言ではないでしょう。中でも「インファナル・アフェア」はこの点がもっともうまく表現されている映画作品といえます。

 この作品のリメークである「ディパーテッド」でこの作品の良さを悉く台無しにしてくれたハリウッドの連中は、この「インファナル・アフェア」全体に醸し出されている悲哀の感やタイトルの「無間地獄」の意味合いをもう少しよく理解して欲しいものです。