- 出版社/メーカー: 東北新社
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- 作者: 双葉十三郎
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そんな中、町から500キロ離れた油田で火災が発生した。その火災を鎮火するためには、ニトログリセリンが必要であったが、それをトラックで油田まで運ぶ必要があった。ニトログリセリンは、ちょっとした衝撃で大爆発を引き起こすので、トラックでそれを運搬することは、命がけの作業であったため、石油会社は運搬に成功した者に対して多額の報奨金をかけたのだった。
ちょうど多額のお金を求めていたマリオ、マリオと一緒に暮らしていた大工の男ルイジ、それから最近パリから町にやってきたいかがわしい男のジョー、そしてビンバの4人がこの運搬の任に当たることになり、2台のトラックにそれぞれマリオとジョー、ルイジとビンバに分譲して、火災現場まで向かう旅が始まった。
途中、悪路が続く場所もあったが、急ブレーキを踏んだりすれば、大爆発を起こす危険性があるので、2台とも慎重に運転を続けた。崖から落ちてきた岩が道を塞いでいたり、山道の途中の切り返しのための足場の木が腐りかけていたりして、2台は苦戦するが、何とかそれを切り抜けた。
途中、怖じ気づいたジョーが
「報酬は運転代と恐怖の代金だ」
と口にするが、多額の報酬はいつ爆発するか分からないという「恐怖」に対する報酬だった。
しかし、先頭を走っていたルイジとビンバの車が突然大爆発を起こす。マリオとジョーが現場に駆けつけると、ルイジとビンバの車は跡形もなく吹っ飛んでいた。そして、爆発現場には、原油が流れ込んでできた大きな水たまりができつつあり、マリオらの車の行く手を塞いでいた。
ジョーは原油の水たまりに漬かりながら、トラックを前に進めようとするが、途中、ジョーが足をとられて、動けなくなる。一方、トラックを運転するマリオも、トラックを水たまりの途中で止めれば二度と動けなくなるので、前に進まざるを得ず、ジョーの足がトラックにひかれてしまった。結局、この怪我が原因で、ジョーは火災現場にたどり着く前に命を落としてしまった。
マリオは結局1人で火災現場にたどり着き、多額の報償を手にして、ラジオから流れるワルツを聴きながら、浮かれた気持ちで町に向かって運転をしていた。町の人たちも、マリオの帰りをワルツを踊りながら待ちわびていた。
しかし、そんな浮かれたマリオには、あっけない結末が待っていた・・・。
わずかな衝撃でも車が吹っ飛ぶという設定が、この映画のスリル感を醸成しており、この設定のアイデアこそが映画の核心となっています。終始、手に汗握る場面が続き、最後まで見る側を飽きさせることがありません。
淀川長治氏が『淀川長治 究極の映画ベスト100』の中で、マリオとルイジはホモセクシャルで、マリオがジョーに夢中になったことからルイジが嫉妬し、その腹いせにルイジが酒場でシャンペンを注文して豪遊するが、ジョーはそれを田舎者と見下し、ジョーとルイジが喧嘩をしたのだ、という見方を述べておられますが、これはなかなか鋭い見方だなぁと思いました。確かに、この映画では、3人の男のホモセクシャルの関係とニトログリセリンの爆発の恐怖が複雑に入り組み、映画に奥深さを与えているのだと思います。
- 作者: 淀川長治,岡田喜一郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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