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映画、書評、ジャズなど

Art Tatum-Ben Webster-Red Callender-Bill Douglass「The Tatum Group Masterpieces」

ジャズ

 油井正一氏が1961年に書かれたレビューの中で、

「ああ何とすばらしいレコードであろう。ここには二人の巨星のあざやかな競演が聴かれる。あざやかなんてものではない。何と云ったらいいのだろう。」

と絶賛しているアルバムです。確かに全体としてこんなに素晴らしいアルバムに巡り会うことはめったにありません。

 アート・テイタムは1909年生まれで、生まれつきほぼ全盲だったようですが、音楽に対する鋭い感性を持ち、“神”と崇められた存在でした。このアルバムのもう1人の雄であるベン・ウェブスターも、スウィング時代の三大テナーと称されたミュージシャンであり、テイタムと同じ1909年の生まれです。この作品が録音されたのが1956年ですから、2人とも40代後半という円熟味を備えた年齢を迎えていたことになりますが、それが演奏に余裕を与えています。

 1曲目の「Gone With The Wind」は、アート・テイタムの軽やかでシックなピアノ演奏で始まりますが、それがしばらく続いた後、ベン・ウェブスターのテナーが存在感たっぷりで割り込んでくるところは、グッとくるものがあります。この曲、映画とは直接関係はないようです。数々のミュージシャンたちがこの曲を吹き込んできましたが、このアルバムの演奏はとりわけ素晴らしいものとなっています。

 それから何と言っても素晴らしいのが「My One And Only Love」です。フランス・シナトラが歌ってヒットした曲で、ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンの共演が有名ですが、このアルバムの演奏はコルトレーンらのバージョンと比べても勝っているように私は思います。

 ジャズの定番の「Night And Day」も最高の出来映えです。

 やはり、ジャズには肩肘合った演奏というのは似合いません。このアルバムのアート・テイタムベン・ウェブスターも、本当に伸び伸びとゆったりと演奏しており、貫禄に溢れており、ジャズの持つ最大の魅力を存分に発揮しています。

 静かな大人の夜に聴くのにぴったりな1枚です。