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「恐喝(ゆすり)」★★★

恐喝(ゆすり) [DVD] FRT-125

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 ヒッチコックの初期の映画です。当初はサイレントとして作られたのをトーキー映画として撮り直したもののようで、サイレントとトーキーの要素が半々ずつといった感じです。

 アリスと刑事のフランクは恋人同士であったが、2人がレストランで食事中、アリスはフランクからの映画の誘いに対して、煮え切らない態度をとっていたため、業を煮やしたフランクは席を立ってしまう。アリスは、別の男クルーから家に誘われ、クルーの自宅にあがる。アリスとクルーは一緒に絵を描いたりしていたが、クルーがアリスを暴行しようとしたため、アリスは抵抗して、その場にあった刃物でクルーを殺してしまった。

 刑事のフランクはこの殺人事件を担当することとなったが、現場にアリスのハンカチが落ちていたのを見つけ、そのことをアリスに伝える。ある前科のある男が2人のやりとりを見ており、それをエサに2人を恐喝する。

 しかし、その男は犯行の時間帯にクルーの自宅周辺にいたことが目撃されており、警察はその男がクルーを殺したと考える。アリスは自分以外の者が犯人とされることに罪悪感を覚え警察に出頭するが・・・。


 最後はものすごくあっけなく終わってしまい、ストーリーとしてはかなり不満足な点があるものの、ヒッチコックのカメラワークの凄さは随所に遺憾なく発揮されています。

 この映画を見て思ったのですが、ヒッチコックのカメラワークの原点は、サイレント時代に養われたものなのではないかという気がします。サイレント映画は、せりふがないわけですから、視覚のみによって見る側にはっきりとメッセージを伝えなくてはなりません。それを身振り手振りの巧妙さによって表現した天才がチャップリンだったとすれば、カメラワークの巧妙さによって表現しようとしたのがヒッチコックだったのかもしれません。

 以後のヒッチコック映画の萌芽がすでに見られるという点では貴重な映画です。