- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2005/07/29
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この映画は在日の人の目線で描かれているものであり、その政治的スタンスや暴力的な描写を巡ってかなりの賛否両論が渦巻いているようです。私としても、あまり率直な評価をするつもりはないのですが、政治的な側面をあまり意識せずに見れば、2つの民族を隔てた大きな壁を巡る人間模様を上手に描いた映画であると思いますし、沢尻エリカの演技力も見応えがありました。
時代は1960年代、高校生の松山はサッカーの親善試合を申し込みに朝鮮高校を訪れた際に、沢尻エリカ演じるキョンジャに一目惚れする。松山はキョンジャに近づくために、韓国語やギターを覚えようとするが、キョンジャは朝鮮高校の番長の妹であり、日本人と在日の人達を隔てる大きな壁が2人の間に立ちはだかる。
最後、川での乱闘シーンとラジオ局で松山が放送禁止の「イムジン河」を演奏するシーン、そして番長の恋人が出産するシーンが重ね合わされる構成は、映画のクライマックスを盛り上げる上で大変効果的で、感動的でした。
在日の問題というのは、今日でもニュースで日々話題になっているように、決して過去の問題ではありません。在日の人達が日本人の社会にうまく溶け込めていない面が今でもあるわけです。
この映画では、日本人と在日の人達が容赦なくぶつかり、過激なまでに乱闘を繰り広げています。そして、両者が根本的に仲直りするような兆候は最後まで見られません。
その根深い歴史的経緯をふまえれば、おそらく、両者の間の溝はそう簡単に埋まるものではありません。
日本国内における在日の問題のみならず、日本は韓国を始めとするアジアの国々とのぎくしゃくした関係が続いていますが、この対立を根本的に解決することはやはりそう簡単ではないといわざるを得ません。
しかし、対立を「一時休止」することはできると思います。
この映画でも、番長の恋人の出産シーンに仲間が駆けつけるために、両者の乱闘は「一時休止」されます。
両者が「仲直り」するのではなく、対立の「一時休止」としたところに、私はこの映画の一抹の良心を感じました。