映画、書評、ジャズなど

「続 忍びの者」★★★★

 

続 忍びの者 [DVD]

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『忍びの者』の続編です。

前作では、信長によって伊賀忍者が滅ぼされ、石川五右衛門は忍者から足を洗って、マキと幼い子供とともに穏やかに過ごしていた。しかし、そんな五右衛門らを襲撃し、五右衛門は愛する一児を無残に殺害される。

五右衛門は、信長にしぶとく抵抗を続けていた雑賀の一向一揆のもとを訪れ、信長への反撃に向けた共闘を開始。

五右衛門は、信長から冷遇されていた明智光秀をけしかける。光秀は豊臣秀吉が遠征に出ている隙を狙い、信長のいる本能寺に奇襲をかける。五右衛門は最後、信長と対峙し、残酷に信長を殺害する。

その後、秀吉は、雑賀の一向一揆に猛攻撃をかけ、一向一揆をせん滅させ、マキも命を落とす。

五右衛門は秀吉側に捕らえられ、熱湯風呂によって処刑されることに。。。

 

 

昭和に作られた時代劇だけあって、今では考えられないほどの残酷なシーンがたびたび登場します。中でも、五右衛門が信長を殺害するシーンは、手足を切り落としていく残忍な描写となっています。

忍者映画という響きから想像されるようなエンターテイメント的な要素はなく、主役の市川雷蔵のさわやかな雰囲気とは対照的な重苦しい空気が始終漂う映画ですが、逆にリアリティが感じられます。おそらく、戦国時代のいくさはこんなむごたらしい感じだったのでしょう。

 

「忍びの者」★★★★

 

忍びの者 [DVD]

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1962年の山本薩夫監督の作品です。主役は市川雷蔵シリーズものですが、その最初の作品です。忍者映画ではありますが、戦国時代を忍者として生きる人々の集落を舞台にリアリティがある作品です。

 

忍者の石川五右衛門は、百地三太夫を頭領とする忍者の集団に属しており、三太夫の寵愛を受けていた。三太夫の悲願は、信長の暗殺だった。

同じ忍者の集団の藤林長門守も信長の暗殺を狙っており、両者は競合関係にあった。

五右衛門は三太夫の若い妻と不倫関係となり、それを女中らに目撃されていた。三太夫の妻は井戸に転落して死亡。五右衛門は自分が三太夫の妻を殺してしまったと思う。三太夫は、五右衛門が信長の暗殺に成功すれば許すとのこと。

五右衛門は信長の暗殺のために向かった堺で遊女のマキと知り合い、結婚を申し込む。

五右衛門は、三太夫の妻の死が三太夫の殺害によるものであることを知る。

三太夫はマキをも人質にとり、五右衛門に信長の暗殺をけしかける。五右衛門はあと一歩のところで信長を暗殺するところだったが失敗。信長は忍者の集落を逆に攻撃する。

三太夫は殺された。五右衛門は殺害された三太夫の遺体を見て、三太夫がもう一つの忍者集団藤林長門守の頭領も兼ねていたことを知ったのだった。。。

 

 

最後のどんでん返しにはあっけにとられました。ラストのシーンでマキのもとに笑顔で走っていく五右衛門の姿は、とても後味がよく清々しかったです。

五右衛門のキャラクターは決して魅力的というわけではありませんが、最後に五右衛門が卑劣な三太夫に勝利するストーリー展開は痛快で、とても楽しくさせられる作品でした。

「インテリア」★★★★

 

ウディ・アレン監督の1978年の作品です。

コメディ作品が売りのウディ・アレン監督ですが、この作品には一切コメディの要素はなく、初老の夫婦の離婚をきっかけに家族が崩壊していく過程をひたすらシリアスに描いた作品となっています。ウディ・アレン監督も一切出演していません。

 

実業家の夫とインテリア・デザイナーの妻イブは、3人の娘を育ててきたが、子供たちがそれぞれ独立した時期、夫は妻に別居を提案する。イブは自ら家を出ていく。

イブはメンタルの病を患う。3人の娘たちは母親のイブの扱いを巡って動揺する。

しかも、追い打ちをかけるように、夫は新しい恋人と結婚したいと言い出す。夫と新しい妻との結婚式が執り行われ、3人の娘たちも参加する。

その後、これまで住んでいた家で、新しい夫婦と3人の娘たちはパーティーをしていた。そこに、イブが窓越しに現れる。イブはそのまま海岸に向かって行き、海の中へと消えていった。。。

 

 

以下が、ラストのシーンです。


Interiors (Woody Allen, 1978) - Final - Ending [sub. español]

 

この作品は、ウディ・アレン監督のベルイマン監督に対するオマージュのようです。確かに、陰鬱な雰囲気はベルイマン監督の作品以上かもしれません。

 

ただ、やっぱりウディ・アレン監督は、こういうシリアスな作品には向いていないように思います。ラストの場面もそうですが、イブにとっては、何ら希望が見いだせないまま、死に向かって行ってしまうわけです。このイブの死が、何か希望につながっているのであればよいのですが、この作品では、そういう感じはしません。

 

陽気な作品ばかり制作してきたウディ・アレン監督がこんな作品を作るのは、余程の覚悟があったのかもしれませんが、正直に言えば、私はウディ・アレン監督には、もっと陽気なパンチの効いたコメディ作品を作ってもらいたいと思います。

 

「暗殺のオペラ」★★★★☆

 

暗殺のオペラ [VHS]

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ベルナルド・ベルトルッチ監督の1970年の作品です。

東京都写真美術館でベルトリッチ監督の作品の上映が特集されており、鑑賞してきました。

ボルヘスの伝奇集の中の『裏切り者と英雄のテーマ』から着想を得て作られた作品というだけあって、キツネにつままれれたような気持ちにさせられます。

 

イタリアの田舎町タラの駅にアトスという若い男が降りた。彼の父親は反ファシズムの英雄だった。かつてムッソリーニの暗殺の計画がばれて、劇場で何者かに射殺されたのだった。アトスは、父親の元愛人のドライファに呼び出されたのだった。

アトスはドライファから、かつての父親の同士であった3人の男に会うように言われる。また、彼らに敵意を抱いていた地主にも会う。その地主は父の殺害を否定する。

アトスは、何者かがアトスを町から追い出そうとしている気配を感じる。そうした中、アトスは、実は父親の同士であった3人こそが父親の殺害犯であることを知る。実は、ムッソリーニの暗殺計画を漏えいしたのが、アトスの父親だった。

そのことを咎められた父親は、3人の同士に対して、自分を殺害して、反ファシズムの英雄とすることを求めたのだった。。。


映画「暗殺のオペラ デジタル・リマスター版」 予告篇

 

ラストのシーンは、アトスがタラの街を去ろうとして駅に滞在するシーンなのですが、実はそこに町がなかったかのような示唆を与える不思議なエンディングとなっています。

オペラの曲が大変効果的に使われていて、非日常的で幻想的な作品の雰囲気を効果的に醸し出しています。

ファシズムの英雄が実は全く逆であったというエンディングは圧巻としか言いようがありません。作品を通して、街の人たちのアトスに対する態度がどことなくぎこちないわけですが、その意味が最後に明らかになっていくという展開は、極めて巧妙です。

アトスの父親の元愛人を演じているアリダ・ヴァリは、かつて『第三の男』にも出演されていますが、年を重ねたアリダ・ヴァリもとても魅力的で、この作品で欠かせない存在となっています。

 

それにしても、ベルトリッチ監督がこの作品を29歳の時に制作したというのは、驚愕です。

ポール・オースター「オラクル・ナイト」

 

オラクル・ナイト (新潮文庫)

オラクル・ナイト (新潮文庫)

 

 2003年のポール・オースターの作品です。物書きである主人公が、現実の世界と執筆中の小説の中の世界をオーバーラップさせながら、やや複雑な二重構造が小説の基盤を成しています。

主人公は、大病から回復したばかりの作家シドニー・オア。妻のグレースと2人で暮らしている。

シドニーはあるとき、チャンという中国人が開店したばかりの文房具店でポルトガル製の青いノートに運命的に出会い、小説を書き始める。

小説のモチーフは、ダシール・ハメットの『マルタの鷹』に出てくる、忽然と姿を消す男の逸話だった。その男は、ビルの工事現場から落ちてきた梁が危うく直撃しそうになったのだが、それをきっかけに、家族に別れも告げずによその町へ行き、一から人生をやり直すというもの。

シドニーは、この『マルタの鷹』に出てくる男に倣い、ボウエンという男を主人公にした小説を書き始める。しかし、ボウエンが地下室に閉じ込められるところで、ストーリーが行き詰まってしまう。

一方、シドニーはチャンの青いノートとの劇的な出会いを経て小説を書き始めるものの、現実の世界でもトラブルに見舞われる。チャンの店を再び訪れた際には、既に文房具店はなく、チャンは別の店で働いていた。そして、チャンに誘われるがままに猥褻な店に連れていかれる。さらに、妻のグレースの様子がおかしくなるのだが、それはグレースが妊娠したためだった。グレースは、シドニーの友人でもあるトラウズとも付き合っていて、自分の子供がシドニーの子かトラウズの子か分からなかったのだ。

グレースは、トラウズの不良息子に襲われ、殺されかける。トラウズは病気で死亡するが、その直前に、シドニーに多額の資産を譲るべき小切手を送っていた。

シドニーは送られてきた小切手を見て涙があふれてきたが、幸せを感じていた。。。

 

 

非常に複雑なプロットの小説なので、一言であらすじを語るのは難しいです。最初この小説を読み始めたとき、プロットの複雑さに一度読み進めるのを断念してしまいましたが、それほど、現実の世界と小説の中のフィクションの世界が混線しながら、話が進んでいきます。

 

しかし、主人公シドニーの、運命に身を任せつつ進んでいく淡々とした姿勢がとても魅力的です。これは、村上春樹氏の小説に出てくる主人公との共通点だと思います。様々なトラブルに巻き込まれつつも、さほど強い意思を持たずになすがままに生きていく姿勢というのは、ある意味、現代人の共感を得られやすいような気がします。

 

さすが、ポール・オースターらしい作品でした。

 

 

「殺したい女」★★★★

 

Ruthless People [DVD]
 

1986年の痛快なコメディ作品です。

 

サム・ストーンは、財産目当てで妻のバーバラと結婚したが、愛人がおり、バーバラの殺害を企てる。しかし、その直前に、妻バーバラは、サムにかつて自分が発案したファッションを盗用されたことを恨んでいるカップルに誘拐される。

サムは誘拐犯から身代金を要求されるが、妻が殺されることを内心望んでいるため、すぐさま警察に連絡し、犯人の要求にも積極的に応じない。

誘拐犯は身代金の額を引き下げてくるが、それでもサムはまともに対応しなかったが、そうこうしているうちに、サムに自作自演の嫌疑がかけられ、愛人がいたことも公になってしまう。

そんな中、バーバラと誘拐犯は次第に意気投合するようになる。そして、バーバラは逆に誘拐犯と結託して、サムから奪った金品を誘拐犯のカップルに渡るように仕組むのだった。。。

 

 

何ともナンセンスなコメディではありますが、比較的脚本がよくできていて、十分に楽しめる作品となっています。

驚くのは、サムの妻のバーバラを演じているベット・ミドラーです。

ベット・ミドラーといえば、どちらかといえば、歌手というイメージが強いのですが、1989年にビルボード・チャートで1位に輝いた代表曲♪Wind Beneath My Wingsで聴かせる美声は、この映画のキャラクターとは似ても似つかぬ印象です。


Bette midler wind beneath my wings Live #BetteMidler

 

観終わった後に清々しい気持ちになれます。

 

「トゥルー・グリット」★★★★

 

トゥルー・グリット [Blu-ray]

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コーエン兄弟が監督、スピルバーグが製作総指揮という豪華な作品です。父親を殺された少女が、自ら保安官を雇って、殺害犯を追い詰めていくというストーリーです。

 

14歳の少女マティの父親が殺される。マティは、父親を殺害したチェイニーを捕らえ、父親の仇を討つべく、連邦保安官のコグバーンを雇う。そこに、テキサスのレンジャーのラビーフも合流する。3人は野宿を重ねて荒野を進む。一方、チェイニーはお尋ね者テッド一味と合流していた。

しかし、マティは1人で川に水を汲みにいくと、チェイニーとばったり鉢合わせてしまい、連れ去られてしまう。

マティははチェイニーに殺害されそうになるが、間一髪でコグバーンが救出。逆にマティはチェイニーを撃ち殺すが、その弾みで穴に転落し、毒蛇に噛まれてしまう。コグバーンはマティを抱えながら夜通し走って街に向かい、マティは一命を取り留めるが、腕を切断することになる。

その後、マティは父の事業を引き継いで年を取っていくが、あるとき、コグバーンから手紙が届き、旅芸人としてやっているとのこと。マティはコグバーンのもとを訪ねるが、ちょうど3日前に亡くなったとのことだった。

マティはコグバーンの墓に足を運んだ。。。

 

さすがコーエン兄弟の作品だけあって、初めから終わりまで緊迫感が張り詰めたクオリティの高い作品です。

 以下は、これまでに鑑賞したコーエン兄弟の作品です。



 

主人公のマティがとても毅然としてしっかりした役柄の女の子で、飄々としながらも執拗に父親の敵を取ろうとする姿がとても魅力的です。