映画、書評、ジャズなど

レイモンド・チャンドラー「ロング・グッバイ」

 

久々に読み直してみましたが、さすがによく練れているミステリーです。そして、何と言っても村上春樹氏の翻訳が読みやすく、グイグイと引き込まれていきます。

 

主人公のフィリップ・マーローは、ひょんなことからテリー・レノックスという酒癖の悪い男と知り合いになる。テリーの妻シルヴィアは、メディアを牛耳る富豪ハーラン・ポッターの娘で、華やかな男関係があったが、何者かに惨殺され、その直後にテリーは逃亡する。マーローもテリーの逃亡を手助けする格好となり、一時は嫌疑をかけられる。

その後、小説家ロジャー・ウェイドの妻アイリーンがマーローに対し夫の監視を依頼する。ウェイドは不安定だったが、やがてウェイドは自宅で銃により死亡。

マーローは、テリーの過去を探り、真相を明らかにしていく。。。

 

最後はあっといわせるどんでん返しが待ち受けています。

 

あとがきで、村上春樹氏は、この作品は『グレート・ギャツビー』を下書きにしているのではないかという仮説を提唱しています。確かに、テリー・レノックスという人物は、ギャツビーを彷彿とさせる刹那的で魅力的な人物ですし、主人公のマーローも、ニック・キャラウェーに似ていますし、現にチャンドラーは、フィッツジェラルドの作品を愛好していたようです。この村上春樹氏の推論には賛同します。

 

それにしても、私立探偵マーローという孤高で芯の強い主人公は本当に魅力的です。その中でも、この作品は最高傑作と言っても過言ではないでしょう。

 

とにかく素晴らしい作品です。

「PFRFECT DAYS」★★★★★

ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役にして製作した作品で、役所広司はカンヌで男優賞を受賞した作品です。

ユニクロの柳井社長の息子さんでもある柳井康治氏が渋谷のトイレを刷新するプロジェクトをPRする目的で計画したものです。

 

役所広司演じる中年の清掃員が黙々とトイレを清掃する作品なのですが、その一見単調とも思える日常の中に、豊かな人間模様が埋め込まれていることを感じさせます。

 

外国人監督が作った「THE 日本映画」といった趣で、作品を包み込む空気感は日本映画そのものです。

 

作品を支えているのが、主役の役所広司の演技力と存在感であることは言うまでもありませんが、それを支える脇役陣も光っています。石川さゆり演じるスナックのママ、そしてママの元夫の三浦友和。短時間の登場場面で存在感を発揮しています。

 

そして、作品のタイトルにもなっている♪PFRFECT DAYSが作品全体の空気をうまく作り上げています。

とても印象的で味わい深い作品で、個人的にも最も好きなテイストの作品でした。

佐藤究「幽玄F」

著者の前作『テスカトリポカ』が素晴らしい作品だったので、この新作を手に取ってみました。

著者の謝辞によると、三島由紀夫の超音速戦闘機の搭乗体験記に強い影響を受けているようです。

主人公の透は戦闘機のパイロット。小さい頃から空に憧れ、パイロットを目指す。

やがて透は自衛隊に入り、F-35Aを操縦するようになり、並外れた飛行技術を発揮するようになる。

タイで多国間共同訓練が実施され、透は派遣される。やがて透は帰国するが、身体に異常をきたすようになり、パイロットを辞め、バンコクバングラデシュで転々と働くようになる。

透は、バングラデシュの奥地でUFOが降りてきて宇宙人を銃で撃ったという話を聞く。透はその場所に向かい、そこでF-35Bの機体を発見する。透はその奥地に滑走路を作り、機体を修繕して、超音速で飛行させた。。。

 

この作品では、仏教の影響が色濃く描かれています。主人公の祖父が真言宗の住職で、両親が離婚した後、主人公は祖父の家で生活することになります。作品中、仏教の描写が随所に登場します。その意味するところを理解するのは難しいですが、作品全体の空気を基底しています。

 

前作ほどの衝撃は感じませんでしたが、世界を舞台にした壮大な作品に仕上がっており、著者の筆力を感じた作品でした。

「アラビアのロレンス」★★★★★

かつて何度か観た映画でしたが、昨今のイスラエルパレスチナ情勢を鑑み、再度大型スクリーンで鑑賞しましたが、今の中東の混迷の原因を端的な掴むのに最適な作品であることを改めて認識しました。

 

ロレンスはアラブ民族をトルコから解放するために奮闘するわけですが、結果的は英国はフランスと密約を結んで領土を分割してしまいます。この無責任なやり方が以後長く続く中東の混乱を引き起こす根本要因になっていることは言うまでもありません。

 

作品でも描かれているように、この地域には多くの民族が存在していました。そこにオスマン帝国という重石があって辛うじて秩序が保たれていたわけですが、英国はその重石を取っ払った上で、欧米列強の進出を認めてしまったわけです。

 

これはイラク戦争の際の米国の振る舞いと似ています。米国はフセインという重石を取り除いたことで地域に混乱を招いたわけです。こうした欧米列強の無責任な行為が歴史的に繰り返されてきた結果が今の中東情勢を招いていることは、もっと強調されてもよいと思います。

 

以前の記事にも書きましたが、この作品の見どころは、ロレンスがマッチの火をフーッと吹き消すと同時にパッと場面が夕焼けに染まる砂漠の映像に切り替わるところでしょう。<日常的>な都市の場面から一気に<非日常的>な砂漠へとスリップさせられるタイミングがいかにも見事です。

 

今こそ多くの若い世代にも見てもらいたい作品です。

 

小川哲「地図と拳」

少し前に読了した作品でしたが、余韻の深い読後感故に、なかなか書評が書けずにきてしまいました。

満州という広大な土地の一角の架空の都市を舞台に、様々な立場の人々が関わり合い、新しい都市を建設していき、それが失敗する過程を描いた作品です。

この作品では、架空の都市である「李家鎮」が舞台となっています。そこに、都市計画に携わる日本人やロシアの神父が関わってきます。

 

この作品のすごいところは、架空の都市という設定のSF小説であるにもかかわらず、立派な歴史小説にもなっているところです。こんな小説な生半可な知識では書けません。

著者の経歴を見ると、東大大学院の総合文化研究科博士課程に在籍されていたとのことで、幅広いバックボーンをお持ちなのだと思われます。

 

以前読んだ『嘘と正典』よりも読みやすい作品になっていたと思います。

いつかまた読み直してみたいと思える作品でした。

和歌山紀行

この年末は、東京の喧騒から逃れようと、和歌山県を旅してきました。南紀の方は鉄道で行くと思ったよりもかなりの時間がかかり、これまでなかなか行く機会がありませんでしたが、今回初めて勝浦や白浜に足を伸ばしてみました。

 

1. 紀伊勝浦探訪

名古屋で新幹線から特急南紀号に乗り換え、4時間近く電車に揺られると、紀伊勝浦駅に到着します。のんびりした漁港といった趣で、駅前の老朽化した商店街は、年の瀬が押し迫っているせいもあってか閑散としており、それほど人は多くありません。

f:id:loisil-space:20240101123642j:image

紀伊勝浦駅からまず向かったのは、熊野那智大社です。駅からバスに乗り、大門坂で降りて、そこから熊野古道を歩いていくと、熊野那智大社に辿り着きます。

f:id:loisil-space:20240101120623j:imagef:id:loisil-space:20240101120704j:image

熊野の本宮大社、新宮の速玉大社と並んで熊野三山と呼ばれています。かつて神日本磐余彦命(かむやまといわれひこのみこと)が那智の浜に降り立ち、那智の滝を見つけられたのが起源だそうです。その後、一行は八咫烏の導きによって大和の橿原に入られ、神武天皇の即位につながったとされています。

この地の素晴らしさは、やはり那智の滝の神々しさに尽きます。

f:id:loisil-space:20240101120815j:image

この滝は、熊野那智大社の別宮である飛瀧神社御神体として崇められています。飛瀧神社から見上げる滝のスケールに圧倒されます。さらに近づくと、滝に綺麗な虹がかかっており、よい年を迎えられることを確信しました。

f:id:loisil-space:20240101120845j:image

熊野那智大社飛瀧神社の間には、青岸渡寺というお寺があります。

f:id:loisil-space:20240101120935j:imagef:id:loisil-space:20240101120745j:image

滝の横に写っている三重塔もこのお寺の施設です。神社とお寺が何の違和感もなく同居しており、かつての神仏習合の名残りが色濃く残されています。かつては様々な仏像や仏具があったようですが、明治の神仏分離のときにその多くが破壊や移設されたようです。

この日の宿泊はホテル浦島。海に細長く突き出た半島を丸々所有しているようで、とにかく広大な敷地です。

f:id:loisil-space:20240101121119j:image

駅から数分歩いたところにある桟橋から専用の渡し船に乗るとホテル浦島の玄関前に到着します。

このホテルの売りは何といっても洞窟風呂でしょう。海に面した巨大な洞窟の中に温泉があるのです。硫黄の匂いがして白濁しており、いかにも効能な高そうなお湯です。ホテルに着くとまず忘帰洞という洞窟風呂に入りました。かつて貴族たちが熊野三山詣に来たとき、この風呂に浸かったと言われているそうです。正に唯一無二の温泉です。

ホテルの中のエレベータで山の上まで登ると、山上館という別棟の建物があり、そこから中庭に出られるようになっています。ちょうど日が陰りかけた時間帯で、高台から眼下の海や島々を一望できます。

f:id:loisil-space:20240101121100j:image

晴れた日の絶景はとても素晴らしく、人が少なかったこともあり、このシチュエーションを独占する優越感に浸ることができます。ホテルの敷地内には神社もありました。

f:id:loisil-space:20240101123536j:image

今回は素泊まりだったので、夕食は勝浦市内に繰り出すことに。再び渡し船に乗って市内に戻り、予め予約しておいた『桂城』という料理屋に伺いました。

f:id:loisil-space:20240101121146j:image

勝浦はまぐろが有名ですから、まぐろのおまかせコースを注文することにしました。『熊野三山』という銘柄の地酒とともに新鮮なまぐろを堪能しました。

二軒目は、『おでんと平和 No.9』という不思議な名前の店に。別のスナックに行くつもりでしたが、時間が早かったせいか閉まっていたので、近くにあったこの店に入ることにしました。お酒の種類の多さと創作系のおでんが売りのようです。アボカドのおでんというのが個性的で、搾りたてのサワーとともにほっこりした時間を過ごしました。

店を出た頃には、ホテル浦島行きの渡し船は終わっており、仕方なく歩いてホテルに向かいます。もともと歩いて行く仕様になっていないので、車の通り道を辿って、車が入るのに合わせてゲートをくぐり、無事ホテルに辿り着きました。

こういう田舎の街での居酒屋探訪は、大人のロマンですね。いい店に当たると、とてつもなく幸せな気分になれます。

 

2. 新宮から白浜へ

翌日は、新宮にある神倉神社と熊野速玉大社を参拝してきました。まずは、紀伊勝浦駅から飛び乗ったバスで、神倉神社へ。

f:id:loisil-space:20240101121312j:image

小高い山の上に鎮座していますが、ここまでは急な階段を登らなければなりません。

f:id:loisil-space:20240101121235j:imagef:id:loisil-space:20240101121249j:image

その勾配は、想像をはるかに超えており、一歩踏み外せば、下まで転落して命を落としかねないほどです。足腰に自信のない方は避けた方が良さそうです。

黙々と階段を登っていくと、御神体である巨大な岩と社殿にたどり着きます。そこから見下ろす景色が何と素晴らしいこと!この景色を見るだけでも、苦労して登る甲斐はあると思います。

f:id:loisil-space:20240101121357j:imagef:id:loisil-space:20240101121427j:image

その後に向かったのは、熊野速玉大社です。神倉神社から歩いて15分くらいのところにあります。

f:id:loisil-space:20240101123409j:image

拝殿にお参りしたあと、神宝館なるものがあったので、立ち寄ってみました。熊野速玉大社には、国宝に指定された熊野速玉大神坐像や熊野夫須美大神坐像など数々の貴重な神像が伝わっており、それも見られるかと思いきや、これらは別のところで保管されているようです。

これらは「仏像」ではなく、あくまで「神像」です。姿が見えない神の像を作るというのは、偶像崇拝の仏教の影響を受けたものであり、神仏習合の名残りと言えます。そうした貴重な文化財が元あった場所で展示されていないのはやや寂しい感じがします。

熊野速玉大社から海の方に向かって歩くと、阿須賀神社という小さな神社があります。ここも由緒正しい神社のようです。

f:id:loisil-space:20240101123439j:imagef:id:loisil-space:20240101123454j:image

蓬莱山という小さな山をバックにして海辺に鎮座している神社ですが、何とも趣のあるこじんまりとした神社です。

 

その後、新宮駅から特急くろしお号に乗って、白浜へ向かいます。白浜は空港からも近く、和歌山の一大観光地です。美しい白い砂で覆われた海岸が広がっています。

f:id:loisil-space:20240101121945j:image

かつては団体旅行で栄えたものと思われますが、現在は建物の老朽化が目立つホテルが多く、中には廃墟のまま放置されたままのホテル跡も見られました。温泉街全体としては、団体旅行仕様から個人旅行仕様にうまくシフトできなかったのかもしれません。

f:id:loisil-space:20240101121840j:image

駅から白浜の中心部までバスで向かい、そこでレンタル自転車を借りることにします。最近は観光地でも電動自転車のレンタルサイクルのポートが設置されており、気軽に自転車を利用することができます。今回はCOGICOGIというアプリを登録して3時間800円のチケットを購入しました。

三段壁、千畳敷と回った後、沖に浮かぶ円月島を眺めながら、半島の北側をぐるりと回って戻ってきて、ちょうどいい運動になる感じです。

f:id:loisil-space:20240101121516j:imagef:id:loisil-space:20240101121547j:imagef:id:loisil-space:20240101121606j:image

年末で閉まっている施設も多かったですが、短時間で白浜の街の全貌を掴むことができます。

あまり地図に載っていないスポットとして、南無不動明王と常喜院に立ち寄ってみました。前者は円月島の少し先にある小さな祠で、洞窟を潜り抜けると辿り着きます。

f:id:loisil-space:20240101121631j:image

後者の常喜院は、街の中心から少し離れた小高い丘の上に佇むお寺です。いくつかの仏像があり、立派なお寺のようですが、人の気配が感じらませんでした。白浜温泉を開発したという小竹岩楠という人物の銅像が設置されています。

f:id:loisil-space:20240101122015j:image

f:id:loisil-space:20240101121719j:imagef:id:loisil-space:20240101121729j:imagef:id:loisil-space:20240101121752j:imagef:id:loisil-space:20240101121811j:image

ホテルで白浜温泉を浴びた後、夕食は街に繰り出しました。観光地化した場所なので、料理の内容も価格も観光地設定で、コスパはあまりよくなく、紀伊勝浦のような味わいはありませんでしたが、それでも地元の魚を満喫できました。

ホテルに戻ると再び温泉を堪能。勝浦の温泉に比べると色は透明に近いですが、しっかりと硫黄臭があり、満足感の高い泉質であることは間違いありません。

 

3. 白浜から高野山

翌日は、初めての高野山に向かいます。白浜駅から特急で和歌山まで1時間余りかけて行き、そこから各停で橋本駅までさらに1時間、そしてそこから極楽寺駅を経由してケーブルカーで高野山駅までがさらに1時間程度。結構な移動時間です。

f:id:loisil-space:20240101122051j:image

高野山駅に着くと、ザーザー振りの雨。。。運よく駅で傘を借りることができ、そのままバスに乗り込み、奥之院に向かいます。

南海鉄道高野線の途中駅はいずれも周辺に何もない山の中の駅ばかりで、高野山駅前は何もない山の中ですが、バスに乗っているとやがて高野山の街がパーッと開けてきます。何もない山奥にこれだけの一大拠点を切り開いた先人たちの尽力に頭が下がります。

奥之院前バス停で降りて、弘法大師御廟まで歩いて向かいます。途中、豊臣家や加賀前だけなど由緒ある家々の墓が並んでいます。浅野内匠頭の墓もあります。

f:id:loisil-space:20240101122137j:imagef:id:loisil-space:20240101122205j:image

また、全国の企業が物故した従業員の霊を弔うために建てた慰霊碑がずらりと並んでいます。参道の両側に建ち並ぶ杉の木々は巨大で、神々が宿っていそうな雰囲気を漂わせています。

弘法大師御廟では、今でも弘法大師が瞑想を続けているとされ、なんと1200年間にわたり、弘法大師に食事を届ける儀式が続けられているとのこと。信仰心の厚さが感じられます。

次にバスで金剛峯寺に向かいます。そして、そのまま歩いて壇上伽藍へ。まずは東塔から金堂へ。

f:id:loisil-space:20240101122420j:imagef:id:loisil-space:20240101122412j:image

象徴的な建築物が根本大塔です。現在のものは1937年に再建されたものですが、圧巻のスケールです。

f:id:loisil-space:20240101122334j:image

ちなみに、高野山の中には、所々に神社の鳥居が見られます。壇上伽藍の中にも、鳥居と御代があります。

f:id:loisil-space:20240101122311j:image

畑中章宏氏の『廃仏毀釈』という本には、空海真言密教創始者としてのイメージが強いが、八幡信仰を取り入れたほか、道場を求めるにあたって、地域の神を祀っているとし、空海神仏習合の積極的な推進者でもあったと述べています。

しかし、現在の高野山では、神仏習合の痕跡は極力隠されているようにも見受けられます。ガイドブックにも数々のお寺が掲載されている一方で、神社についての記載は全くと言ってよいほどありません。

お寺と神社を共存させてきたという日本独特の仏教の歴史をもう少しPRしてもよいのではないかと感じました。

帰り際に、女人堂にも立ち寄り、そこからバスで駅に向かいました。

f:id:loisil-space:20240101122558j:imagef:id:loisil-space:20240101122610j:image

 

4. 総括

高野山からの帰りは、南海特急こうや号でのんびりと難波駅までの旅。

年末を締めくくるにふさわしい信心深い旅になりました。

紀伊半島はまだ手付かず感が残っていて、とても癒されます。次回はもっと時間をかけて、今回いけなかった熊野本宮大社など紀伊山地の奥地の方まで足を延ばしてみたいと思います。

阿刀田高「ナポレオン狂」

最近は歩いたり走ったりしながらaudibleで小説を聴くことが多くなったのですが、audibleは短編小説と相性が良いように思います。

そんなわけで、阿刀田高さんの作品とはaudibleで初めて接することになったのですが、この作品のパンチの効いたテイストに一瞬にして虜にさせられました。

「ナポレオン狂」は、ナポレオン愛好家とナポレオンの生まれ変わりと信ずる男を巡り合わせた結果起こる恐怖の結末を描いた作品。

「来訪者」は、幼子を持つ主婦の家に、かつて出産の際に世話になった病院の雑役婦の女が訪ねてくる話。その後、女の行方を追う警察が訪ねてくるのだが、恐ろしい事実を知ることに。。。

サンジェルマン伯爵考」は、亡父の遺言に従って、不老不死を唱えるサンジェルマン伯爵と面会した話。

「恋は思考の外」は、会社の金を使い込んでしまった娘のために、身代金目的の誘拐を企てる父親の話。完全犯罪かと思ったが、思わぬところからボロが出てしまう。。。

 

これら以外にも、あっと思わず声をあげてしまうような巧妙な結末が待ち受ける数々の短編が並んでおり、短編小説の素晴らしさを改めて認識させられました。