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「逢びき」★★★★☆

逢びき [DVD]

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 デヴィッド・リーン監督の1945年の作品です。要はひとときのW不倫映画ですが、さすが作品の構成が秀逸です。

 作品は、中年の男女が駅の待合室でお茶しているところに、一人の女性が割り込んでくるシーンで始まります。男は近々アフリカに赴任する医師であることは分かりますが、このシーンの意味は映画のラストになってはっきりします。

 2人の子供の母親であるローラは、毎週木曜日に買い出しなどの目的でミルフォードという町に列車で出かけていたが、目に入ったゴミを取ってもらったことで、妻子持ちの医師アレックと出会うことに。やがて2人の仲は深まっていき、互いに惹かれ合う関係となり、毎週木曜日にミルフォードで逢瀬を重ねる。

 ローラは不倫関係に心を痛めていた。そんなときアレックはアフリカへの赴任が決まる。ちょうど最後の別れの場面が、作品冒頭のシーンだった。別れを惜しんでいるときに、中年女性のドリーが割り込んできて、ぶち壊しにされてしまったのだった。

 こうした一連の経緯を、ローラは夫の前で回想していた。そんな様子を見て、夫は心配する。ようやく我に返ったローラは、夫と固く抱き合うのだった。。。 音楽は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が使われています。

 ストーリー自体は単なるW不倫なのですが、巧妙な作品構成によって、そんなありきたりのストーリーが輝きが出てくるところは、さすがデヴィッド・リーン監督です。そして、作品の大半が、ローラの回想という形を取っている点も秀逸です。

 ちなみに、原題は“Brief Encounter”ですが、原題の方が作品にマッチしているように思います。

「明日に処刑を」★★★☆

 マーティン・スコセッシ監督の初期の作品で、1972年の作品です。

 父を飛行機事故で亡くしたパーサが貨車に乗って移動している途中、過激な共産主義者のビルと出会い、2人は恋人になる。さらに、賭博詐欺師のレーク、黒人のヴォンと出会い、4人は共に行動する。途中、保安官に捕らえられるも、集団で抵抗して脱走を図る。列車を止めて乗客から金品を奪ったり、やりたい放題。
 ビルとヴォンが牢屋に入れられている間、パーサは売春宿に滞在するも、やがて逃げだし、ヴォンと再会。ビルが脱獄して隠れている住処を訪ねて、ビルと再会して愛を再確認する。

 しかし、すぐに追っ手がやってきて、激しいビルとパーサは捕らえられる。ビルは貨車に磔にされて殺害される。そこにヴォンがやってきて激しい銃撃を加える。

 ビルが磔となった貨車は動き出す。パーサはその後を伴走しながら追っていく。。。

 スコセッシ監督らしさは既に現れていますが、なにせあまりお金をかけずに制作されたとのことで、セックスシーンの安っぽさは否めません。

 しかし、1930年代頃のアメリカの雰囲気は良く描かれているように思います。

 ちなみに、原題は“Boxcar Bertha”ですが、邦題と随分違います。原題が良いかどうかは何とも言えませんが、いずれにしても、邦題がかなり意味不明であることは確かです。