映画、書評、ジャズなど

「ボヘミアン・ラプソディ」★★★☆


今話題の作品をようやく観てきました。

幼少期をインドで過ごし、ロンドンに渡って来て、Queenのヴォーカリストとして大成功を収めたフレディ・マーキュリーの生涯を描いたものです。Queenの楽曲がふんだんに使われており、特に最後のライブ・エイドの場面で盛り上がりは最高潮に達します。

 

この作品は、フレディがロンドンでQueenのメンバーと出会う場面から始まります。ヴォーカリストとしてあっという間に頭角を現し、メジャーデビューを果たします。恋人もできるのですが、自らがバイセクシャルであることに気づき始め、フレディの悩みは深まっていきます。

また、大手レコード会社からソロとしての契約のオファーが舞い込み、メンバーとの関係もぎくしゃくします。結局、フレディはQueenのメンバーが必要であることを改めて認識し、ラストのクライマックスのライブ・エイドで見事なステージを披露します。

 


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全体を通して、フレディのバイセクシャル性にかなり焦点を当てた作品のように感じました。それはもちろん、フレディという人間を形成するに当たって、大きな比重を占めたことはその通りだと思います。

欲を言えば、フレディがブライアン・メイらのバンドに合流する前の苦労の時代についても描いてほしかったし、フレディの音楽性の部分についても、もっと深堀してほしかったという気もしないではありません。

 

ただ、そんな不満も、ラストのライブ・エイドの場面で吹っ飛びます。♪Bohemian Rhapsody、♪RADIO GA GA、♪Hammer To Fall、♪伝説のチャンピオン、の流れは絶妙で、思わず涙がこぼれます。

 

この作品の大成功は、やはりQueenの素晴らしい楽曲をふんだんに使ったことにあるような気がします。

 

「シマロン」★★★★

 

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1960年公開の西部開拓映画です。

19世紀後半の西部開拓の熱気がムンムン伝わってくる作品です。

 

お嬢様のセイブラは、両親の反対を押し切って、結婚したばかりの弁護士の夫ヤンシーとともに、西部オクラホマの「ランド・ラン」に参加する。ランド・ランとは、開拓地に新規に入植者を募集する際、号砲を合図に一斉に馬を走らせ、早い者勝ちで土地を獲得する命がけのレースだ。

ヤンシーは結局、希望する土地を獲得することができず、育ての親の後を継いで新聞社を経営することに。

だが、ヤンシーは新聞社経営だけで満足せず、持ち前の正義感が高じて、命の危険を冒して原住民を守ったり、ギャングと闘ったりして、何年も家を離れて、義勇兵に参加したりする。同じ時期に入植した他の人々の中には、石油を掘り当てたトムのように、大いに出世する者もいる中、いつまでも安定しない生活が続くことに対し、次第に妻セイブラの不満は溜まっていく。

あるとき、ヤンシーに知事に任命するのでワシントンに来るようにという電報が届く。今度こそは安定した生活を得られると、セイブラも喜ぶ。しかし、ワシントンに行ってみると、そこには石油で財を成したトムがいた。トムは、原住民の権利を奪ったということで、ヤンシーが新聞で批判した人物だった。トムが、ヤンシーを懐柔するために知事の任命を画策したと知り、ヤンシーは知事を断り、セイブラはヤンシーに憤る。

ヤンシーはその後、音信不通となる。セイブラは新聞社を切り盛りし、大きな企業へと育てた。ヤンシーは第一次大戦に英国兵士として参加しているとの情報があったが、その後、戦死したとの報がセイブラのもとに届く。

ヤンシーはオクラホマの英雄として銅像が建てらえれた。。。

 

さんざんヤンシーに振り回され続けたセイブラですが、晩年は、ヤンシーのことをようやく理解するようになっていくところが、とても清々しいです。

そして、「ランド・ラン」のシーンは圧巻です。膨大な数の馬と馬車が一斉に草原を駆け抜けます。途中、段差につまづいて多くの馬車が破壊され、多くの人々が馬から振り落とされ、中には後から迫る馬や馬車に轢かれて命を落とす者もいます。実際の情景がどうだったかは分かりませんが、土地の獲得に向けた人々の飽くなき欲求と熱気が見事に表現されたシーンです。

 

見ごたえのある作品でした。

梶谷懐「中国経済講義」

 

 中国経済の現状を中立かつ冷静に分析した良書です。世間には、中国の技術の凄さを強調する論調と、中国の暗部を強調する論調とが、ともすれば両極端に分かれる中、本書は、終始冷静な筆致で分析がなされています。

 

こうした観点から見て、本書で特に興味深かったのは、第6章「共産党体制での成長は持続可能か―制度とイノベーション―」です。著者は、中国の知的財産を巡り3つの層に整理できることを指摘します。

一つ目の層は「プレモダン層」で、知的財産権をまったく無視する層。

二つ目の層は「モダン層」で、ファーウェイやZTEのように、近代的な知的財産権によって、独自の技術をガッチリ囲い込む戦略を採用している層。

三つ目の層は、独自の技術を積極的に開放し、様々な人が関わることでイノベーションを促進していこうとする層。

著者は、これら3つの層が渾然一体となっているのが、深圳のエコシステムの一つの特徴だと指摘します。

また、著者は、深圳における「デザインハウス」の存在にひときわ注目しています。「デザインハウス」とは、無数のプレイヤーが乱立する中で、どの会社と付き合えばよいかについて指南してくれるガイドのような役割を担っています。この「デザインハウス」が、3つの層をつなぎ合わせ、相互に補完するエコシステムを構築しているというわけです。

 

現在の中国のダイナミズムを理解する上で、こうした説明は非常に説得的です。日本人はついつい中国の最先端の部分や遅れている部分に限定して注目しがちですが、総体として見ると、現状をよりを良く理解できます。

 

ただ、いずれにしても強調しておきたいことは、深圳の「モダン層」は、先端技術分野においては、日本企業のはるか先を行っているということです。この事実に目をつぶってはいけないと思います。

 

こうした冷静な中国経済分析が出てくることはて、今後、日本が中国にどのように対応していくべきかを考える上で大きな意義を持つと思います。

 

「ラルジャン」★★★★

 

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 ロベール・ブレッソン監督の1983年の作品です。この監督の作品を観るのは初めてですが、いかにもフランス映画といった雰囲気の作品で、冷たく淡々と話が展開されていきます。

 

ガソリンの集金にカメラ屋にやって来たイヴォンは、高校生が友人から渡されて使った偽札をお釣りとしてつかまされてしまい、それをカフェで使おうとして、逮捕されてしまう。

この件で、イヴォンは職を失い、やけくそになって、銀行強盗に加わり、投獄される。

イヴォンには家族がいたが、獄中で娘が亡くなったとの報を受け、妻からも見放されてしまう。

出獄後、イヴォンは、ホテルでオーナーらを次々と殺害。たまたますれ違った婦人の家に居候し、そこでも次々と人を殺めていくのだった。。。

 

 

他人にはめられ、社会に復讐する男の冷酷さが際立った作品ですが、結局、何の救いもなく、最後まで殺人を続けるまま、話は終わってしまい、ある意味、暗く絶望的な作品でした。

 

 

 

 

 

「さよならをもう一度」★★★★

 

さよならをもう一度 [DVD]

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妙齢の婦人役をイングリッド・バーグマンが演じている1961年の作品です。

 

インテリアを手掛けるポーラ(イングリッド・バーグマン)は、トラック販売を手掛けているロジェ(イヴ・モンタン)と長年付き合っていたが、ロジェはポーラとの会食の約束を平気ですっぽかす。

そんなロジェの紹介で、ポーラはある富豪婦人の家の装飾を手掛ける仕事を得る。その婦人の息子フィリップは、ポーラよりはるかに年下だったが、ポーラに惚れ込んでしまう。

ロジェが他の女と泊りがけででかけたのを知り、ポーラはついにフィリップと同居するようになる。しかし、フィリップは、益々ぐうたらな生活を送るようになる。

しかし、ロジェとポーラは再び関係を取り戻すようになり、ポーラはフィリップとの同居を解消する。

ロジェとポーラは同居を始めるのだが、ロジェは相変わらずポーラとの約束をすっぽかすのだった。。。

 

 

この作品の原作は、フランソワーズ・サガンの『ブラームスはお好き』ですが、作品中では、ブラームスの音楽が効果的に使われています。


さよならをもう一度(GOODBYE AGAIN)~マーティ・ゴールド・オーケストラ

 

この作品が公開された当時、イングリッド・バーグマンは40代半ばということになりますが、『別離』や『カサブランカ』などとはまた一味違う、益々洗練された美しさを醸し出しています。

 

ラストの何とも言えない虚無感が印象に残る作品です。

「ナイロビの蜂」★★★★☆

 

ナイロビの蜂 (字幕版)
 

ジョン・ル・カレの原作を映画化した作品です。2005年の公開当時に映画館で鑑賞しましたが、久々に観て、やはりいい作品だと思いました。

 

イギリス外交官のジャスティン(レイフ・ファインズ)はケニアに赴任している。妻のテッサ(レイチェル・ワイズ)も、アーノルドという黒人男性と共に、現地の貧困層の医療問題に取り組んでいた。

しかし、テッサとアーノルドが共に活動で向かった先で、テッサが事故死したという一報にジャスティンは接する。

テッサとアーノルドの関係は、周囲から怪しまれていた。ジャスティンも当初は、2人の関係を疑っていた。しかし、アーノルドは同性愛者であり、テッサと恋に落ちることはあり得ないことをジャスティンは知る。

さらにジャスティンは、テッサは、欧米の製薬企業が、いまだ危険性が払拭されていない医薬品の効果を確かめるために、ケニアの貧しい人々を治験の対象としていたことを突き止め、その問題を政府の高官に直訴していたことを知る。テッサは、ジャスティンに迷惑をかけないよう、ジャスティンに知らせずにこうした活動をしていたのだった。

ジャスティンは、テッサの遺志を引き継ぎ、欧米の製薬企業の横暴を暴いていく。その過程で、ジャスティンは自分の上司も、テッサの活動を妨害していたことを知る。テッサは、製薬業界と政府の利権に手を付けようとして、命を奪われたのだった。

ジャスティンは、テッサが命を落とした場所に赴いた。そして、テッサと同様に、何者かによって命を奪われる。。。

 


The Constant Gardener - Trailer

当初、ジャスティンは妻テッサの不貞を疑っていたのが、次第に、テッサへの疑惑が晴らされていき、テッサが自分を愛していたことを知り、ジャスティンは妻を疑った自分を恥じていく過程が実によく描かれています。

 

ちなみに、原題は“The Constant Gardener”です。ジャスティンは庭いじりが好きな外交官という設定ですので、こういうタイトルが付けられたのでしょう。しかし、外交官でありながら、妻のように社会問題に大した関心を持つわけでもなく、妻が命を落として、その真相を探っていく中で、ようやく庭いじりを超えて、社会問題に関心を抱くようになっていくというジャスティンの成長過程としてこの作品を見れば、非常に奥が深いタイトルのように思います。

 

この作品の魅力の一つは、レイチェル・ワイズの魅力的なキャラクターでしょう。美貌もさることながら、夫に見せる天真爛漫な姿と、その裏で社会問題に鋭く切り込む熱意を併せ持つ難しい役柄をうまく演じています。アカデミー賞では助演女優賞を受賞していますが、大いに納得です。

「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」★★★★


『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ヘイロージャンプフィーチャレット

ミッション:インポッシブルの最新作を鑑賞してきました。

トム・クルーズのアクションは、やりすぎなくらいエスカレートしており、それだけでも見る価値はあります。ヘイロージャンプと呼ばれる飛行機からの危険なダイビングシーンなどは見ごたえがあります。

 

トム演じるイーサン・ハントは、盗まれたプルトニウムを回収するというミッションを与えられる。手掛かりが少ない中、ジョン・ラークという男とホワイト・ウィドウという女がパリで会うことを知り、イーサンらは急遽パリへ向かう。

CIAはイーサンの動向を警戒し、ウォーカーを監視役としてイーサンに同行させるが、しばしばイーサンとぶつかる。

数々の障壁を克服しながら、イーサンらは、プルトニウム爆弾の起爆を阻止する。。。

 

 

アクションシーンだけ見れば、おそらくこれまでのシリーズの中でもダントツかもしれません。パリの凱旋門でのカーチェイスノルウェーのプレーケストーレンの断崖絶壁でのヘリコプターを巡る壮絶な格闘シーンなどは、想像を絶するアクションで、トム・クルーズでなければできないアクションでしょう。

 

正直、ストーリーは無駄にややこしくなっていて、いただけません。アクションを見せるのであれば、もっとわかりやすくシンプルなストーリーにしておいた方が良かったように思います。

 

それでも、この素晴らしいアクションシーンだけでも、必見の作品と言えます。