映画、書評、ジャズなど

「ドライブ・マイ・カー」★★★★


村上春樹氏の短編集「女のいない男たち」の中の『ドライブ・マイ・カー』と『シェエラザード』、『木野』の3つの短編のエッセンスが巧みに取り込まれた作品です。

3時間という長さの映画で、ストーリーも静かに淡々と進んでいくのですが、全く退屈することなく、時間が過ぎ去った感じです。

 

原作については、以下の過去の記事をご覧ください。

脚本家の家福(西島秀俊)は、妻の音(霧島れいか)と仲睦まじい生活を送っていた。2人にはかつて娘がいたが、幼くして肺炎で亡くなっている。音は家福を愛していたのだが、音は仕事で関係した男たちと関係を持つという面もあり、家福はその現場を目撃してしまった。音はある日くも膜下出血で命を落とす。

その後、家福は広島で演劇の仕事を得る。そのオーディションに現れたのが、音とかつて不倫していた高槻(岡田将生)だった。家福は高槻を抜擢するのだが、高槻は傷害事件を起こし、降板する。

家福のドライバーを務めていたみさき(三浦透子)と徐々に打ち解けていく。高槻が降板した際、家福はその代役をやるか、劇を中止するかの決断を迫られた。迷った家福はみさきの出身地の北海道まで車を走らせ、そして自ら代役を務める決断をする。

みさきも、その後、韓国にわたり、新たな生活を歩み始める。。。

 

 

この作品は、原作のストーリーを監督の世界観で再構築しつつも、原作の世界観をうまく表現しています。原作でも、いずれの短編も女たちは男の元をスーッと去っていき、男が孤独に取り残されるような感じでしたが、その点は、この映画作品でも同じ世界観だったように思います。

そんな難しい役柄の男を西島秀俊氏がうまく演じています。西島氏の演技がこの作品を支えているといっても過言ではありません。

 

みさきを演じた三浦透子の独特な存在感も、この作品の雰囲気を形作っています。みさきは最後のシーンで韓国に移り住んでいるのですが、かつて北海道の実家が土砂に押し流された際にできた顔の傷もきれいに治しています。それは、女たちのある種の力強さを象徴しています。

 

村上春樹作品を映画化するのは、とても難しいことです。かつての『トニー滝谷』は、うまく村上ワールドを描いていましたが、村上作品の映画作品は総じて注目度は必ずしも高くなかったように思います。 

 

その中でも、この「ドライブ・マイ・カー」は、非常にうまくいった作品なのではないかと思います。

日本映画の良さをうまく生かした作品でした。