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澁澤龍彦「高丘親王航海記」

著者の晩年に書かれた遺作です。享年は59歳です。

本書の内容は、主人公高丘親王が天竺を目指して旅に出る話です。高丘親王は、義母の薬子から幼少期に性の手ほどきを受け、そのことが旅の最中にたびたび浮かびあがってきます。

道中では、ジュゴンや獏、鳥の下半身をした女など、おとぎ話の世界観が広がります。一番印象的なのは、子供を産んだ後に王妃がミイラになるという国の話です。

著者が死が迫る中で夢の世界と行き来しながら書いたことがうかがえます。

人生のはかなさをこんな形のファンタジーで描けるのは、並大抵の作家にできることではありません。

著者の作品を手に取るのはこれが初めてでしたが、他の作品も読んでみたいと思いました。